あたしは1年間思い続けたセンパイに、
このバレンタインデーであたしの思いとチョコを渡した。
慣れない化粧
流行のオシャレ
ロングだった髪はセンパイ好みのボブに
仕草も、女の子らしくお淑やかにした
この日のために、慣れないお菓子づくりも練習した
なのに、なのに。
結果は―――
「はあああ…」
あたしは、盛大なため息を漏らした。
自分で、作ったチョコを食べるハメになるなんて。
キイ、と錆びたブランコのチェーンは小さく金属音を立てる。
部活だって、ベンキョーだって、
こんなに努力して報われなかったことはなかったのに。
「バカみたい、」
「『ごめん』かぁ。…受け取ってくれてもいいのに」
涙が止まらない。
チョコを包んでいたピンクの包み紙に、水滴を落としていく。
それに何だか、チョコの味が変だ。
とびっきり甘く作ったはずだったのに。
ほんのり苦くて、どろどろに甘いいつものチョコとは違った。
ビターチョコ、
浮かれたあたしは、きっと間違って手にとってしまったのだろう。
「良かった、受け取ってもらわなくて…」
――これが、初めての苦くて切ない失恋【ビターチョコ】の味。