深緑の空間に漂う紅茶のいい香り。導かれるように進んだ先で、少年が籠を持ち何やら摘んでいる。



「あのう、妖精こっちに来ませんでした?」

「来ましたよ。旭さんたちと僕の店で、開店準備手伝ってくれてます」



微笑む少年。



「僕の店?」

「カフェやってるんです。ほら竜胆が咲いてる――」



指差す先には、竜胆に囲まれたラベンダー色のカフェ。



「わあ……!竜胆って、夏咲かないですよね?」

「はい。僕の妖精の力で、本来咲かない季節の花を、咲かせることができるんです」

「すごいですね。あの、今は何摘んでるんですか?」

「ここでしか育たない香草があって、朝と夜にいつも摘むんです」



少年が一つ一つ丁寧に説明してくれる。その時だった、カフェから深紅が出てきて。