「……笛の音?」

「蒼馬だ。笛を吹くのが好きらしい」

「いいね」



まるで夢の中にいるようだ。御言は静かに耳を傾けている。



御言は蒼馬が、笛を吹けるとは知らなかったらしい。当然と言えば当然だ。人前で吹くのが好きじゃないらしく、人気のない時間や場所を選んでいたのだから。



和希はじっと見守る。



夜色になる前の深い蒼。森は深蒼に沈み、幻蒼を映し出す。



森の海。



今までこんなに、美しい蒼をみた事があっただろうか。