「一ノ瀬、どうしたの?」


心配そうに眉を下げて、私に近づいて来たのは綾崎くんだった。

綾崎ハルトくん。
私のすきなひと。


「お、追いかけられて…それで、逃げて、隠れて…」


もともとしゃべるのは得意じゃないのに、綾崎くんの前だから余計に緊張して言葉が喉の奥に詰まってしまっている。


「告白、ふったんだ!?」

「え?…なんで知って…?」


綾崎くんの言う通り、私はついさっき告白というものをされたばかりだった。

知らない人からだったし、私にはちゃんとすきなひとがいるのだから丁寧に断った。

だけど、何がいけなかったのか「お友達からはじめよう!まずは連絡先を交換しよう!」と詰め寄られてしまったのだ。

とっさに怖くて逃げ出してしまって、今に至る。

それをなんで綾崎くんが知ってるんだろう?


「相手、隣のクラスの吉川でしょ。
あいつ声おっきいから、昨日帰り道で話してるのきこえたんだよね。
一ノ瀬さんに告白するぜって言うの」

「そうだったんだ」

「吉川さ、前にも女の子にふられて、ストーカーまがいのことしてたから気をつけたほうがいいかも」

「…うん!」


頷いた私に、綾崎くんがにこりと笑った。


「ねぇ、一ノ瀬。俺の恋人になってみない?」