「では、前回の講義で提出してもらった課題を返します。添削してあるので、清書したら再提出してください」


大きな教室で、大きな黒板の前にポツンと小さく立つ教授が、マイクでそう言った。


こんなに広かったら、もちろん固まって座った連中は、マジかよって声を漏らす。

それが教授に聞こえてないのは、きっとこの部屋が大きいから。


「あと、初回で完璧な課題を提出してくれた人には添削してないので返しません」


真ん中よりちょっと後ろに座ってたあたしが、何気なくふっとドアの方を見ると、颯爽と部屋を出て行く1人の男の人がいた。

顔なんて見えなかったけど、線の細い痩せた人。


「返された人から帰ってください」

講義の終わりを告げた教授は順に名前を呼び、それを受け取った生徒は順に教室から出ていった。


なに?最初に出ていった男はよっぽど自分の課題に自信があるってこと?


ぼーっとその出ていった方向を見ながら、自分が呼ばれるのを待った。