「…あまり無駄なもの、買うなよ?」
「うん!かせーにも、お土産買ってくるね!」
小銭を渡すと、ソラは窓から飛び出して走り去った。
「ほんとに、サル…」
俺はその姿を見送るだけ。


…いつか、こうして。
ソラを手放す時がくるかもしれない。
その時俺は、やっぱりただこうして。ソラの走り去る後姿を、見送る事しかできないのだろうか?


「姫様。お探ししました。早く、湯浴みとお召し替えを」
「…いい。面倒だ」
「いけません、姫様。陛下がどれだけ姫様のお顔を見たがっておられるか」
「…んなの、関係ねー」
「姫様」
若い侍女だけではなく、年老いた女官長までやってきた。
「姫様。ご不満なのはおわかりですが。…この者たちにとっても、仕事ですので」
自分が仕えるにはこの俺は不釣合いだと、言葉の端や態度がそう言っている女官長が。王の言う事を俺が聞かずにいたら、自分達が処分されるかもしれない。と、脅してるようなもんだ。
「…っち」
仕方なく、歩き出す。
「さあ、早く湯浴みを」
この世で一番憎んでいる男に会うために、湯浴みをするために。