「かせー、でも。ほんとは痛いの、無理してる」
「…大丈夫だ。俺は…強いから」
『強く。強くありなさい。玄聖神威』
父上の言葉が、よみがえる。
大丈夫、俺は強い。だから、大丈夫だ。
「姫様、もうそろそろ陛下のご帰還です。お召し替えを」侍女の声がする。
俺はゆっくりとソラを離した。
「よく見ろ、ソラ。俺は泣いているか?」
泣きじゃくるソラは、俺を見上げる。
そして激しく首を横に振る。涙の粒が、飛んでいく。
「だから俺は、大丈夫だ。どこも痛くなんか、ない」
「うん…」
何か言いたい事がありそうな、納得し切れてない表情で、ソラはうなずく。
「姫様、どちらにいらっしゃいます?」
侍女の声が、近づいてくる。
「ほんとに、大丈夫だ。ソラ。ほら、外は祭りなんだろう?小銭をやるから、何か菓子でも買って来い」
「ホント!いいの?」
パッと、顔が喜びに染まる。俺の顔もつられて少し、微笑む。