『びきっ』

それは存外嫌な音だった。

ガラスに熱湯をかけたような、骨にヒビが入ったような…固体にクラックが走る様を連想させるようなそんな音だった。


その音の正体を探るべく、初めて触れたゆりかごをまじまじと見る。

…何も変化がない。




『びきびきっ』

うん、これは何かの怒りに触れたのか。
そう予感させる音だった。

でも…この音は何処か上の方から聞こえる気がするんだよね。
さてはここを建てつけた業者の手抜きなのか。
明日早速文句を言ってやろうと天井を見上げる。


うん…何もないね。


一体何の音なんだろう…
ふと天井を見上げた視線をゆりかごに戻そうと部屋の虚空を捉えた瞬間だった。