放課後、卒業生を囲む在校生。
人いっぱいだな、帰れるかな。
それは満員電車なみだった。
「果歩、はぐれんなよ」
「そっちこそ」
「お前小さいから余計分かんねー」
空だって小さいじゃんかー!
って叫んでやりたかったけどやめた。
「あの!」
「はい?」
いきなり私の前に現れたのは眼鏡をかけた先輩だった。
その人はなぜか私の手を取る。
「僕、ずっとあなたのこと、ファンでした!」
「へ?」
なに?
ファン?
「雨宮果歩さんですよね。遠くから見る事しか出来なかったんですけど、今日気持ち伝えられてよかったです。その、もしよければこの後お茶でも…」
そう言った瞬間。
「お茶はあるんで結構です」
と、先輩の顔に水筒を押し付けてきたのは空だった。
「ちょっ、空」
失礼だよ、初対面の人に。
「げ。原田おまぇ…」
え?
「何やってんすか旬先輩。彼女口説くのやめてもらえます?」
「彼女出来たの知ってたけどまさか雨宮さんとは。残念だよ」
「あのー」
私は二人の間にはいる。
「なに」
空は不機嫌だった。
「知り合い?」
「サッカー部の先輩だよ」
「ええ!」
眼鏡の人なんていたかな。
「果歩は見た事あるだろ。サッカーの時は眼鏡危ないからコンタクトしてたんだよ」
「え、そうなんだ」
「てか。いつまで手、そうしてんの」
そう言って先輩の手をはらう空。
「痛いな。相変わらず乱暴なのは変わってないな空」
「強引なのは変わってないですね」
何この人達。
合わないの?
「練習の時もたまに乱暴入ってたよな。空の場合何かあるたびにすぐプレイに出るんだよな」
「うっせ。果歩行くぞ」
「あ、うん」
「ふっ、最後の最後まで空とは気が合わなかったよ」
「そうですね」
空は私の手を繋ぐ。
きっとはぐれないように。
そんな会話も、すれ違いざまに聞こえた。