早川は警視庁長官室の前に立っている。

緊張で身体が震えている。
ドアノブに手をかけるが、思うように力が入らない。
入室に躊躇っていると、


「私に何か用かね?」


急に後ろから声をかけられ、思わず飛び跳ねた。

この声は・・・・


「おっ、おはようございます!!」


即座に振り向き、深々と頭を下げる。


「ああ、おはよう。さあ、入りなさい。」


「はいっ!!」


その声で顔を上げた。

そこには警視庁長官の永岡の姿があった。

口髭を少々たくわえた、優しそうな顔立ちをしている。

永岡の後に続き、早川も長官室へと入っていく。

部屋の中央にはガラスの角テーブルを挟んでいかにも高級そうな黒のソファが置かれている。

壁際にはショーケースに入ったいくつものトロフィーやメダルの数々。

そして奥には長官永岡のための大きな机と椅子が一つずつ。

永岡はその椅子に深々と腰掛ける。


「それで、何の用かな?」

永岡が早川の方を向く。