バスの造りは至って普通。

中央にある乗り口から後方には2人掛け席が2列、最後列だけ5人掛けになっている。

前半分はというと、右側には1人掛け席が5列。

左側には横向きの4人掛けの席が設けられている。

運転手の席も、後方はガラスが張られているが、横は何もない。

そしてバス最前部には出口がある。


「ねえねえ、諒。今日は何処に行くの?」


「それは秘密。」


諒は勿体ぶるように言う。

「なあんだ〜。」


優香が窓の外に目を向ける。

中川優香。

オレと同じ大学2年生。
もう一緒に遊び始めて1年は経っている。
周りから驚かれるが、まだ付き合っている訳ではない。

オレは幾度も付き合おうと言おうとしたが、毎回最後の一歩が踏み出せずに終わったのだ。

しかし、今日こそは言う。
そのために今日は最高のを用意したのだ。


それにしても外は寒かった。
それもそうだろう。
今日は12月24日。クリスマスイブなのだ。

外は雪が降ってきそうな程。

だから諒も優香も厚手の服を着てきている。


自分は今日、人生一番の大勝負に出るんだと思うと緊張してきてしまった。