「ふあ〜。」


布団から身を起こし、欠伸と共に大きく伸びをする。

ふと時計に視線を移す。

午前9時・・・・・・


「しまった!」


諒は慌ててパジャマを脱ぎ捨て、髪をセットし、昨日選りすぐった服に袖を通す。

よし、準備完了。


「行ってきます!」


無人の部屋に向かって言い残した。


−−−−−−−−−−−−−−−


「ごめんごめん、待った?」


諒は両手を合わせて頭を軽く下げる。


「もう、ぎりぎりだよ。」

中川優香は眉を少し寄せて言った。

今は9時55分。約束の時間の5分前。
なんとか間に合った。
諒はホッとした。


「諒から誘っといて、遅れてたら怒鳴ってるところだったよ。」


そうだ、今日はオレから無理に誘ったんだ。
それは・・・・・


「あっ、来たよ。」

優香が指差す。
バスが二人の元へ近づいてくる。

随分新しいバスだな。
表面がきらきらと輝いている印象を持つ。

バスが停まると、2人は乗り込んだ。

後ろから2列目の進行方向右側の席に腰を下ろした。