そして休み時間。私達3人は海堂先生のところにいった。


「このクラス全員分のノートとワークと実験器具、職員室まで運んでおいてね」


そういって海堂先生は教室から出ていった。私はノート、中川兄はワーク、中川弟は実験器具を持って教室を出た。


「もうっ、中川くんのせいで……」


「「え? どっち?」」


2人は振り向いてそういった。そうだった、どっちも“中川”だ……


「えと……春翔くんの方」


「えー僕!? なんで!?」


「だって、最初に話しかけてきたのは春翔くんじゃん」


「うっ、そうだった……。……あっ、桃花ー!!」


春翔くんは実験器具を片手で持って手をふった。


「……!! 危ない!!」


女の子がそういった瞬間、冬翔くんが私にワークを持たせて落ちそうになっている実験器具を間一髪で支えた。


「ハァ……春翔、危ないだろ」


「ごめん冬翔……」


よかった〜、落ちなくて……と、思った瞬間。


バサササッ……!!


私が持っていたノートと冬翔くんが持たせてきたワークが重さに耐えられなくなって、私達の前に散らばった。


「青空……お前なー……」


冬翔くんが冷やかな目で私を見ている。


「す、スミマセンっ……」


私達3人で黙々とノートとワークを拾っていると。







「もー、大丈夫? 私も手伝うよ!」


さっき春翔くんが手を振って呼んでいた桃花さんがこっちにきて手伝ってくれた。おかげで早くノートとワークを分けることができた。


「ふぅっ、これで全部だよね! ……あっ、私、西園寺 桃花! 春翔達の幼なじみ。よろしくね、琉奈ちゃん!」


桃花ちゃんはそういって教室に戻っていった。私達は急いで職員室まで教室に戻った。その次の休み時間には……。


「へぇー、琉奈ちゃん1人暮らしなんだ!?」


「うん、両親が他界しちゃって中学の2年から……」


「じゃあ、料理とか家事全般できんだ!!」


「うん、特にお菓子作りが得意でマカロン、カップケーキ、ゼリー、あと和菓子も近所のおばあさんに教えてもらってできるようになったんだ」


「青空さんってなんでもできるんだね! 美人でかわいくって、しかも家事もできて! いいお嫁さんになれそうじゃね?」


春翔くんは自分の少しだけ長い髪を指に絡ませながらそういった。


「そ、そうかなあ……?」


私は少し斜め下を向いてそういった。


「うん!! 僕だったら絶対お嫁さんにするもん!!」


!? 私は顔に熱が集まってくのを感じた。








「? 青空さん、どうしたの? 顔真っ赤だよ、熱でもあるの?」


そういって春翔くんは私のおでこに手を当てようとしてきた。


「……なっ、なんでもない! だだ、大丈夫だから!!」


「そうなの? ならいいけど……ムリそうだったら保健室にいきなよ?」


「うん、大丈夫だから……」



そして放課後。



「桃花ちゃーん、一緒に帰ろー!」


「うん! ……そういえばさ、休み時間に春翔が『僕だったら絶対お嫁さんにする』っていってたじゃん? 春翔、全く気づいてないらしいね、私も冬翔も気づいてんのに……。春翔ってさ、琉奈のこと大好きだよねー」


「えっ!?」


桃花ちゃんは私を見てニヤニヤと笑っている。


「なっ、なんで……?」


「だってさー、授業中ずーっと琉奈と話してるし、話してる時にも目が『大好き!!』って感じでさ、先生に怒られて話してなくてもほぼずーっと琉奈のこと見てるし」


「そ、そうなの……?」


知らなかった……っていうか、なんでそんなに知ってるんだろう?桃花は1番前の席で、私達の様子は見えないはずなのに……。


「……ちょっと、羨ましいな……」


「……えっ、なんかいった?」


「あっ……なんでもない! じゃ、また明日ね〜っ!!」


そういって桃花は家に帰っていった。






「ただいま〜」


……っていっても、私と猫のマロしかいないんだけどね。私は私服に着替えてキッチンに向かった。


「今日はー……オムライスにしようかな」


私は材料と調理器具を取り出して、手早く作業を始めた。


「……よしっ、できた!」


今日はいつもより上手くできたから、携帯で写真を撮った。そしてキャットフードを取り出してお皿に出した。


「マロー、ご飯だよー」


マロはベッドで眠っていたが、すぐに目を覚ました。私はリビングテーブルに夕食を並べた。


「いただきまーす」


私が食べ始めたとき、マロはもう食べ終えていた。


「相変わらず、マロは食べるのが早いなー……」


私は10分で完食し、皿を洗ってお風呂に入った。そしてマロのブラッシングをした。マロの毛は毎日ブラッシングをしているからか、いつもサラサラしている。


私はマロが眠ったあと自分の部屋にいってパソコンを立ち上げた。新着メールがあるかを確認して、ブログを書いた。私は更新したあと、電気を消して寝た。



翌日。校門を抜けて歩いていると。


「るーなーちゃん♪」


いきなり後ろから誰かが飛びついてきた。






「きゃあっ!! だっ、誰!?」


「僕だよ〜♪ おはよう琉奈ちゃん!」


振り返るとそこにはニッコニコの笑顔の春翔くんがいた。


「もうっ、いきなり抱きつかないでよ! 彼氏じゃないんだから!」


「えぇ〜……あっ、桃花! おはよーっ!」


「おはよう春翔! あれ? 琉奈ちゃんと登校してきたの? ラッブラブぅ〜♪」


「ちがっ……」


「琉奈ちゃん照れてるんだ〜!? かわいー♪」


「つ、付き合ってなんかないから! ねっ、春翔くん!」


私は春翔くんに同意を求めたが、春翔くんはなにもいわなかった。


「もー、冗談だってば〜! ほら、いこっ!」


私達は走って教室にいった。


「冬翔、まだこないね〜……今日も遅刻かなぁ?」


桃花がそういって腕を組むと同時に教室の扉が開いた。


「あっ、冬翔! 今日は遅刻しなかったんだ!?」


「あぁ、今日はなんか早く目が覚めてさ」


「そういえば春翔くんと冬翔くんは一緒に暮らしてないの?」


双子なのに一緒に登校してこないなんて……


「一緒に暮らしてるんだけど冬翔が起きるの遅いし、待ってたら僕も遅刻しちゃうもん」


「あっ、冬翔遅刻しないように1日中起きてればー?」


「あ、なるほど、その手があったな」


「「ダメだから!!」」






そして4時間目の授業中、春翔くんはなにかを私のノートの端に書き始めた。書き終わったあとノートの端を見てみると、【琉奈ちゃん、今度の土曜日空いてる?】と書かれていた。私は【うん、空いてるよ!】と書いて返事を待った。


数分後【僕と冬翔と桃花と琉奈ちゃんでさ、遊園地にいかない?】と書かれていた。春翔くんの方を見てみると、肘をついてうたた寝をしていた。一方、冬翔くんはというと……


寝ちゃってる……。桃花は一生懸命先生の話を聞いてノートにまとめていた。


「えー、ではこの英文を……中川春翔! 訳してみなさい」


「……ほぇ……??」


春翔くんは目を覚ましたが、何を聞かれたのかは分からないらしい。


「……る……琉奈ちゃん、今どこやってるの……?」


「No.2の英文を日本語に訳すんだよ」


教えてあげたおかげで、春翔くんは先生に怒られないで済んだ。



「琉奈ちゃん、さっきはありがとね、教えてくれて!」


春翔くんは授業が終わったあとすぐに話しかけてきた。


「あっ、そういえば遊園地……いく?」


「うん、もちろん!」


「やった〜!! ねぇねぇっ、琉奈ちゃんもいくって!」


春翔くんはまだ寝ている冬翔くんを無理矢理起こした。







「春翔……聞こえてるから……あ、昼食」


皆の弁当の匂いがしたからか、冬翔くんは体を起こし、鞄から弁当を出して食べ始めた。冬翔くん、いつも寝てるけど食べるときだけは早いな……。


「ごちそうさま。授業始まるまであと30分あるし、屋上いってくる」


早っ……。冬翔くんってマイペースだなぁ……。


「あっ、いたいた、春翔ー!」


「ん? 桃花、どうしたの?」


春翔くんは桃花ちゃんに呼ばれて、「ちょっといってくる」といって廊下に走っていった。私が昼食を食べ終わった頃、春翔くんと桃花ちゃんが戻ってきた。


「琉奈ちゃん、さっきの遊園地にいく件なんだけど、桃花が絶叫系ムリで3人でいくことになったんだけど、それでもいい?」


「ごめん琉奈、私お化けとかの絶叫系が苦手でさ……。3人で楽しんできなよ!」


桃花はそういって私の背中をバシッと叩いた。


「うん……おみやげ買ってくね!」


「ありがと♪ ……あっ、もうチャイムなったね、またあとでね」


桃花は私の耳元で「デート楽しんできなよ♪」といって戻っていった。デートって……、付き合ってないし……!!







そしてデート……じゃなくって、3人で遊園地にいく日。私は春翔くんに教えられた場所にいった。春翔くんは先にきていて、ベンチに座って携帯をいじっていた。


「春翔くーん! ごめん、少し遅れちゃって……」


「ううん、大丈夫! 僕も今きたところだから」


春翔くんの私服、可愛いな……。あれ、そういえば……


「春翔くん、冬翔くんは……? もしかしてまだ寝てるの?」


「いや、桃花がいってたようにずーっと起きてたから寝てることは……あっ、冬翔!」


春翔くんは冬翔くんに向かって大きく手を振った。


「やめろ、恥ずかしいだろ。つか、なんで俺まで……」


「冬翔はもっと他の人と話したりしないと!! ほら、いくよ!」


春翔くん、弟なのにしっかりしてるなぁ……。私達は遊園地に向かって歩き出した。そして10分後、とても大きい遊園地に着いた。


「さて……何から乗る?」


「うーん、私はジェットコースターかな〜」


「僕はどれでもいいけど……冬翔は?」


「帰る」


「だめ! ジェットコースターに決定! レッツゴー♪」


春翔くんは私と冬翔くんの手を握って乗り場に走った。ジェットコースターは思ったよりも怖くて、降りたあともまだクラクラしていた。そのあとはお化け屋敷にいった。私と春翔くんはずっと叫んでいたけど、冬翔くんは冷静でお化けに『こんにちはー』といっていた。







「はぁ〜っ、怖かったねお化け屋敷! あっ、あのバナナクレープ美味しそう! 僕、買ってくるけど琉奈ちゃんと冬翔は食べる?」


「うーん、私はクレープよりもジュースが飲みたいな〜」


「俺はコーヒー」


「そっか、じゃあ買ってくるね!」


そういって春翔くんはクレープ屋に走っていった。


「……ねぇ、……冬翔くん」


私はベンチに座っている冬翔くんの隣に座ろうとした。


「……座るな」


「え……」


そ、そんなこと言われても……


「冬翔くんってさ……友達いないの?」


「うっせぇな」


「……なんで……そんなに人と関わりたくないの?」


「……人が怖いから」


……人が怖いからか……


「琉奈ちゃ〜ん、冬翔〜! お待たせ〜!」


沈黙が続いてから5分後、春翔くんが戻ってきた。


「はいっ、琉奈ちゃんのジュースと、冬翔のコーヒー!」


「ありがとう、春翔くん!」


私はペットボトルのふたを開けてジュースを飲もうとしたその時。


「琉奈ちゃんのそのジュース美味しそ〜……一口飲んでいい?」


春翔くんは私の返事を待たずに私の手からボトルを取って飲んだ。