〜冬翔side〜


俺なにやってるんだよ……。何でさっき……。


『好きだ。お前が好きすぎて好きすぎて……俺が俺でいられない』


……っ、自分でいったのに恥ずかしい。


「……ただいま」


「おかえり冬翔! 今日は早かっ――」


「春翔。俺の部屋にこい」


「……ほぇ?」


俺は春翔の襟元を掴み、俺の部屋に連れていった。


「どうしたの? 冬翔」


「お前なー……状況を考えろよ」


「……えっ? えっ?? なんのこと?」


「だからー、……なんで桃花にキスしようとした時にくるんだよ」


「そ、そんなこといわれたって……って、キス!? しようとしてたの!?」


「あぁ、そうだ。今度桃花と映画観に行くことになったんだけど、どんな服を着ればいいか?」


「んー……クールに青とか黒じゃない?」


「そうか。ありがとな」


そういって俺は春翔を部屋から出した。






〜桃花side〜


家に帰って勉強をしていると、冬翔から電話がきた。


『桃花? 俺だけど』


「……オレオレ詐欺? 冬翔」


『違ぇよ。明日、いつもの駅で10時だ。またな』


「あ、ちょっと待っ……切れた……」


聞きたいことあったけど、まあいっか。翌日、私は待ち合わせ場所にいった。冬翔は珍しく早くきていた。……カッコいー……。


「おーい、冬翔〜! お待たせ!」


「ん。じゃあいくか」


「うん!」


私達は電車に乗って映画館にいった。……ていうかこの映画館、チケットがないと入れないらしいところだけどどこで手にいれたんだろう……。


「桃花、どれみたい?」


「うーん……じゃああれ!」


私が見たいといったのは恋愛系のホラー。私達はチケットを店員に渡し、中にはいった。売店で食べ物等を買って席に座った。数分後、映画が上映された。見たい映画が見れてよかった〜、しかも好きな人ととか超嬉しい……。そう思いながら右に置いてある飲み物をとって飲んだ。


「……桃花、それ……俺の」


「え!? あっ、本当だ、コーヒー……! ご、ごめん……」


「いや、大丈夫……」


冬翔はそういって腕で顔を隠した。……あ、間接キス……!!私は恥ずかしくなって顔や体が熱くなり、じぶんのジュースを飲んで体を冷ました。それから30分後……。


「……冬翔、寝てる……?」


隣に座っている冬翔は腕を組んで眠っていた。すると冬翔はだんだんこっちに傾いてきて、私の肩に頭が乗っかった。


「ひゃっ、……冬翔?」


……しょうがない、寝かせておこう。……髪サラサラだな……睫毛も長くてキレイ……って、映画見ないと!それから映画が終わるまでずっと冬翔は眠っていた。






「――冬翔ー、起きて! 映画終わったよ!」


「ん……。じゃあ出るか……」


冬翔は大きく伸びをしてそういった。冬翔、これからどこに連れていくんだろう。そう思っていると冬翔はこっちを向いて手を差し出してきた。


「……ん」


「……ん?」


「手繋ぐかってことだ。……つか、いわせんじゃねぇよ、恥ずかしいだろ」


「……えへへっ、……ありがと」


「……おぅ」


私はそういって冬翔の手を握った。冬翔は素直じゃないけど……やっぱり私、冬翔が好きだな……。そして夕方。冬翔は家まで送ってくれた。


「冬翔、今日はありがとね。楽しかった!」


「あぁ、俺も楽しかった。またな」


「うん、またね!」


私は冬翔に手をふって家に入った。そういえば私達って一応両想い……なんだよね?冬翔、『好き』って保健室でも、フラれて泣いた時にもいってたし……。


「――告白、か……」






それから2ヶ月後。もうすぐでクリスマス。


「琉奈は春翔になにあげるの?」


「うーん、……春翔くんは甘いものが好きだから手作りのお菓子とかかな♪ 桃花は誰かにあげるの?」


「誰かはいえないけど……あの人寒がりだからマフラーかな」


「そっか……。その人とはうまくいってる?」


「うん! ……それでね、プレゼント渡すときに告白しようと思ってるんだ」


すると、遠くの方から冬翔がこっちにきた。


「桃花。なんの話してんの?」


「あっ、冬翔くん! 今ね、好きな人にクリスマスプレゼント、なにを渡すか話してたの」


「ふーん。桃花、……好きなヤツいるんだ?」


「うんっ、……いるよ!」


……目の前に、ね。


「……あっ、桃花! ちょっとトイレいってくるね!」


「えっ」


そういって琉奈は教室を出ていった。……もしかして琉奈、気づいてる……??


「桃花。……好きなヤツって誰?」


「え、それはっ……いえない……」


いえるわけないでしょ、『私の好きな人は冬翔だよ』なんて。


「……そ。ならいい」


冬翔はそういって自分の席に戻って寝始めた。


「はぁ……春翔に相談したいよ〜……」


そう思っていたからか、春翔が私の方に歩いてきた。


「ねぇ桃花、琉奈ちゃんどこにいったか知ってる?」


「あー、お手洗いだよ……」


「ありがと! ……っていうか、桃花どうしたの?」


「実はクリスマスに告白しようと思ってるの……」


「そうなの!? 頑張って!! んじゃっ」


「え゙……」


いっちゃった……。クリスマス前は皆忙しいのかなぁ? そしてクリスマス当日。私は帰ろうとしている冬翔を引き止めた。


「――あっ、待って冬翔!」


「……桃花?」


ど、どうしよう。緊張していおうとした言葉を忘れちゃった……!


「あ……えっと……」


「……帰るか」


「え……?」


「“一緒に”ってことだ。いくぞ」


「……うんっ」


私は琉奈に『頑張るね』と伝えて、学校を出た。


「……いいのか?」


「えっ? なにが?」


冬翔はポケットに手をいれてそういった。


「……好きなヤツにプレゼント、渡さなくてもいいのか?」


「あ、……うん」


いつ渡せばいいんだろう……。


「お、雪降ってきたな。……さみぃな……」


「……冬翔! これ、……あげる!!」


私は5日間で編んだマフラーを渡した。


「……おぅ、ありがと」


「……それでね、私……伝えたいことがあるの」


「あぁ。なんだ?」


「私っ……、冬翔のことが好き……!!」


「え……桃花の好きなヤツって……」


いっちゃった……!!けど、フラれることはない……はず。


「…………ごめん」


「……え?」


私……フラれたの……?






「――なーんていうわけねぇだろ。俺も好きだ、バーカ」


冬翔はそういって笑った。


「……もうっ、フラれたのかと思ったじゃん! 冬翔のイジワル!!」


「前から好きって何回もいってるのに、フるわけねぇだろ」


あっ、そっか……。すると冬翔は私があげたマフラーを私の首に優しく巻いてきた。


「え? これ、冬翔にあげ――」


「違う。2人でってこと」


そういって冬翔は残りの半分を自分の首に巻いた。


「な。これで桃花も暖かいだろ?」


「……うん」


「あとは…………こうすればもっと暖かいな」


冬翔は私の手をぎゅっと握ってそういった。


「……冬翔、大好き!」


「……おぅ」


私達は雪がどんどん降る街の中を通って帰った。






〜琉奈side〜


「――春翔くん、桃花うまくいったかなぁ?」


私は今、春翔くんと私の家のリビングにいる。『クリスマス、一緒にいようよ』と春翔くんがいってきたからだ。……ドキドキするな、一晩ずっと一緒だなんて……。


「大丈夫だよ、あの2人なら! だってどっちかが告白すれば両想いだから付き合えるし☆」


「ていうか、そもそも桃花の好きな人は冬翔くんなの?」


「うん、冬翔だよ。この前は2人で映画観に行ったんだって♪ ……まぁ、一応帰ったらうまくいったか聞くんだけどね♪」


そのあと春翔くんはゲームをしたり勉強したり、テレビを見たりしていた。私はその間に、春翔くんが好きそうな夕食を作った。


「ん? この匂いはもしかして、カレーライス?」


春翔くんはゲームをやめて、夕食を作っている私の方にきた。


「うん! 春翔くん、カレーライス好きかなって思って」


「ホント!? やった〜! 僕、カレーライス超好きなんだ♪」


「よかった♪ さてと、食べよっか春翔くん!」


私達は夕食を食べ終わったあと、お風呂に入って寝室にいった。


「てか、冬翔ってホントに素直じゃないよね〜……。琉奈ちゃんとも仲良くしたいらしいけど……」


「そうなの? 私、てっきり嫌われてるのかと……」


「まぁ、冬翔が女子を嫌ってるのは本当だけどね」


確かに、冬翔くんが女子と話してるところはあまり見ないな……。


「ま、いっか☆ ……もう10時だし寝よっか」


春翔くんはそういって2人〜3人くらいが入って寝れるベッドにむかった。


「……おいで、琉奈ちゃん」


「うん、……きゃあっ!!」


すると、私は春翔くんにベッドに押し倒された。


「春翔……く――」


「……琉奈」


いきなりの呼び捨てに驚いていたら、春翔くんに口を塞がれた。


「……琉奈可愛い、大好きだよ」


「私も大好きだよ……、春翔くん」


私達はとてもリラックスできるBGMを聴き、抱き合って寝た。






そして休みが明けて1月中旬。


「ねぇ琉奈、今度デートしない!?」


体育が終わって着替えていると、桃花がそういってきた。


「え、デートって……」


「私達と春翔達で買い物にいくの! いく?」


「うん、春翔くん達もOKしてたの?」


「もちろん!!」


「……あっ、琉奈、桃花!」


教室に戻ると、春翔くん達がきた。


「あっ、いつなら空いてる? デート」


「僕達はいつでも空いてるよ〜」


「そう? ……じゃあ明後日に決定☆ このあと授業ないし帰ろっか!」


私達は荷物をまとめて学校を出た。私と春翔くんは、桃花達の後ろを歩いていた。


「……あ、冬翔私があげたマフラー使ってくれてるんだ!?」


「あぁ。桃花はマフラーとかしねぇの?」


「うん、家に一応あるけど使ってないんだよね。さすがに今日は寒いな……」


桃花がそういってくしゃみをすると、冬翔くんは自分のマフラーを半分首に巻いて、残りの半分を桃花に巻いた。


「寒いならしてくりゃいいじゃねぇか。心配させんな」


「……ありがと冬翔!」


桃花はそういって冬翔くんの左腕に抱きついた。冬翔くんは『……別に』といっていた。


「……桃花と冬翔くん、ラブラブだね〜……」


「じゃあ僕達も“ラブラブ”する?」


「えっ?」


春翔くんの方をむいた瞬間、目の前が暗くなった。……春翔くんがキスをしてきたから。


「ね? ラブラブでしょ?」


春翔くんはそういってニコッと笑った。前を歩いていた桃花達はニヤニヤと笑った。


「ラブラブですね〜♪」


「もっ、桃花っ……!!」






そしてダブルデート当日。私達は巨大なショッピングモールにきた。


「あっ! この服琉奈に似合いそう! これ、着てみて?」


春翔くんに渡されたワンピースを持って、私は試着室に入った。


「……ど、どうかなぁ? スカートが短くって恥ずかしい……」


「大丈夫だよ、似合ってる! 可愛いし」


「そう? ……じゃあ買っちゃおうかな……」


私はそういってレジカウンターにいって会計をして春翔くん達のところに戻った。


「お待たせ〜! ……って、春翔くん!?」


私が戻ると、春翔くんはカチューシャをつけてピンク色のトップスを着て、スカートをはいていた。……か、可愛い……!!


「!! 琉奈に、見られた……っ」


半泣き状態の春翔くんは、冬翔くんに抱きついた。


「さ、次行こう!」


桃花は春翔くんを戻させて、私達は本屋にむかった。……冬翔くんが好きそうな場所だな……。本屋で本を買ったあとは、近くの公園で休んだ。


「3人とも、何か飲み物買ってくるから待っててね!」


「あ、俺もいく」


「「いってらっしゃーい!」」


「……琉奈っ、デートってやっぱり楽しいね!」


「うん! 春翔くん、いつも優しいし面白いし、たまに積極的になったり……」


「冬翔は冷たいけど、中身はとてもいいんだよね〜、少し俺様系な感じでさ……」


2人でそう話していると。


「ねぇねぇ、君達暇でしょ〜?」


ベンチに座っている私達に話しかけてきたのは3人の髪を金色や赤に染めている男達。


「いや、暇じゃないし、連れがいるんで……」


「いいじゃん、俺達と楽しいコトしない?」


「やっ……!!」


男達は私と桃花の腕を掴み黒い車に乗せようとしてきたその時。私達の後ろに誰かがきた。






「――おい、てめぇら。俺の女に手ェだしてんじゃねぇよ」


「今すぐ手を離さないと――痛い目に遭うよ?」


後ろをむくと、そこにはいつもとは違う雰囲気の春翔くんと冬翔くんがいた。凄い殺気……。


「ひっ……!! すみませんでしたあぁぁっ!!」


そういって男達は急いで私達から手を離して、車に乗って走っていった。


「桃花、大丈夫か?」


「うん、大丈夫だよ冬翔」


「琉奈……!! 怖かったよね、なにもされてないよね?」


「怖かったけど助かってよかった……」


「「……さっきの、超かっこよかったよ!!」」


私と桃花は、そういってニコッと笑った。


「俺の調子狂わすんじゃねぇよ、桃花……」


冬翔くんはそういって顔を隠した。


「……その顔、反則。可愛すぎ」


続けて、春翔くんが私にむかってそういった。照れてる……?


「……あぁもう、帰るぞ桃花!!」


冬翔くんは桃花の腕を引っ張り、走った。春翔くんと私は2人を追いかけた。


「……ねぇ春翔くん」


「? なぁに?」


「……これからもずっと一緒にいてくれる?」


「うん、もちろん!」


――数年後、私と春翔くん、桃花と冬翔くんはめでたく結婚したのだった。



   *end*





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