〜冬翔side〜
「……ねぇ冬翔。桃花さ、やっぱり無理してるよねぇ?」
バスケの試合の休憩時間。春翔がそう聞いてきた。
「あぁ。桃花はいつも『大丈夫大丈夫』っていって……」
そう話していると、女子達の方から悲鳴が聞こえた。
「――桃花ー!!」
桃花!?桃花に何かあったのか……!?俺はいつの間にか女子達の方へ走っていた。
「桃花!! ……青空、何があったんだ!?」
「そ、それが……ボールが顔面に当たって『大丈夫』っていった瞬間にバタッて――」
「チッ……だからいったのに……!!」
俺は桃花を抱きかかえて、保健室へいった。
「――先生! いるか!?」
「! どうしたんだ、その子は!!」
「あぁ、体育で倒れました……」
俺は近くにあったベッドに寝かせて、先生に事情を話した。
「……うん、貧血だね。ダイエットで昼食を食べていないことが原因だ。……ちょっと出かけてくるから後は任せたよ。……鍵閉めたりとかするなよ? 冬翔くん」
「……しねぇよ」
そういって先生は保健室を出ていった。
〜桃花side〜
「ん……」
あれから30分後。私は目が覚めたとき、保健室のベッドにいた。……あぁそっか、私倒れたんだった……。
「……お、目が覚めたか」
声がする方を見てみるとそこには、コーヒーを飲んで本を読んでいる冬翔がいた。
「冬翔……? もしかして運んでくれたの……?」
「あぁ、つーかお前全く重くなかったぞ? 腕も細いし」
「そっか。ありがとね、運んでくれて」
「……ったく、迷惑なんだよこっちは。心配かけやがって。だから無理すんなよっていったのに。……ま、桃花が無事でよかったけどな」
そういって冬翔は少しだけ笑った。……素直じゃないなぁ。
「あ、もう授業戻っていいよ?」
「いや、先生に任されてるからまだここにいる」
「ん、そっか。……冬翔?」
冬翔は私のベッドの近くにきて、私の頭を撫でてきた。
「……俺、やっぱ限界かも」
「え? ――わっ」
そういって冬翔はベッドに乗ってきた。
「なっ……冬翔!?」
「好きだ。お前が好きすぎて好きすぎて……俺が俺でいられない」
冬翔……?いつものクールな冬翔と違う冬翔に少し、ドキッとした。
「冬……翔……? どうしたの……?」
「桃花……好きだ」
冬翔はそういって顔を近づけてきた。
「――っ」
「桃花〜っ、起きてる〜?」
その時、保健室のドアが勢いよく開いて誰かが入ってきた。この声は……。
「チッ……、春翔か」
「あっ、冬翔! 桃花元気?」
「あぁ、元気だぞ。……家に帰ったら俺の部屋にこい」
「へ? ……うん。そろそろチャイム鳴るし、またあとでね♪」
春翔はそういって保健室を出ていった。
「……あのさ、桃花」
「うん。なに?」
「今度の日曜に2人で映画観に行かねぇか?」
「……え」
それってもしかして、……デート!?
「だめか? だめなら春翔達にこのチケット渡すけど」
「ううん、いく!」
「じゃあこれ、映画館のチケット。詳しいことはあとでな。俺、教室に戻るから」
「うん、ありがと!」
冬翔はそういって保健室を出ていった。
〜冬翔side〜
俺なにやってるんだよ……。何でさっき……。
『好きだ。お前が好きすぎて好きすぎて……俺が俺でいられない』
……っ、自分でいったのに恥ずかしい。
「……ただいま」
「おかえり冬翔! 今日は早かっ――」
「春翔。俺の部屋にこい」
「……ほぇ?」
俺は春翔の襟元を掴み、俺の部屋に連れていった。
「どうしたの? 冬翔」
「お前なー……状況を考えろよ」
「……えっ? えっ?? なんのこと?」
「だからー、……なんで桃花にキスしようとした時にくるんだよ」
「そ、そんなこといわれたって……って、キス!? しようとしてたの!?」
「あぁ、そうだ。今度桃花と映画観に行くことになったんだけど、どんな服を着ればいいか?」
「んー……クールに青とか黒じゃない?」
「そうか。ありがとな」
そういって俺は春翔を部屋から出した。
〜桃花side〜
家に帰って勉強をしていると、冬翔から電話がきた。
『桃花? 俺だけど』
「……オレオレ詐欺? 冬翔」
『違ぇよ。明日、いつもの駅で10時だ。またな』
「あ、ちょっと待っ……切れた……」
聞きたいことあったけど、まあいっか。翌日、私は待ち合わせ場所にいった。冬翔は珍しく早くきていた。……カッコいー……。
「おーい、冬翔〜! お待たせ!」
「ん。じゃあいくか」
「うん!」
私達は電車に乗って映画館にいった。……ていうかこの映画館、チケットがないと入れないらしいところだけどどこで手にいれたんだろう……。
「桃花、どれみたい?」
「うーん……じゃああれ!」
私が見たいといったのは恋愛系のホラー。私達はチケットを店員に渡し、中にはいった。売店で食べ物等を買って席に座った。数分後、映画が上映された。見たい映画が見れてよかった〜、しかも好きな人ととか超嬉しい……。そう思いながら右に置いてある飲み物をとって飲んだ。
「……桃花、それ……俺の」
「え!? あっ、本当だ、コーヒー……! ご、ごめん……」
「いや、大丈夫……」
冬翔はそういって腕で顔を隠した。……あ、間接キス……!!私は恥ずかしくなって顔や体が熱くなり、じぶんのジュースを飲んで体を冷ました。それから30分後……。
「……冬翔、寝てる……?」
隣に座っている冬翔は腕を組んで眠っていた。すると冬翔はだんだんこっちに傾いてきて、私の肩に頭が乗っかった。
「ひゃっ、……冬翔?」
……しょうがない、寝かせておこう。……髪サラサラだな……睫毛も長くてキレイ……って、映画見ないと!それから映画が終わるまでずっと冬翔は眠っていた。
「――冬翔ー、起きて! 映画終わったよ!」
「ん……。じゃあ出るか……」
冬翔は大きく伸びをしてそういった。冬翔、これからどこに連れていくんだろう。そう思っていると冬翔はこっちを向いて手を差し出してきた。
「……ん」
「……ん?」
「手繋ぐかってことだ。……つか、いわせんじゃねぇよ、恥ずかしいだろ」
「……えへへっ、……ありがと」
「……おぅ」
私はそういって冬翔の手を握った。冬翔は素直じゃないけど……やっぱり私、冬翔が好きだな……。そして夕方。冬翔は家まで送ってくれた。
「冬翔、今日はありがとね。楽しかった!」
「あぁ、俺も楽しかった。またな」
「うん、またね!」
私は冬翔に手をふって家に入った。そういえば私達って一応両想い……なんだよね?冬翔、『好き』って保健室でも、フラれて泣いた時にもいってたし……。
「――告白、か……」
それから2ヶ月後。もうすぐでクリスマス。
「琉奈は春翔になにあげるの?」
「うーん、……春翔くんは甘いものが好きだから手作りのお菓子とかかな♪ 桃花は誰かにあげるの?」
「誰かはいえないけど……あの人寒がりだからマフラーかな」
「そっか……。その人とはうまくいってる?」
「うん! ……それでね、プレゼント渡すときに告白しようと思ってるんだ」
すると、遠くの方から冬翔がこっちにきた。
「桃花。なんの話してんの?」
「あっ、冬翔くん! 今ね、好きな人にクリスマスプレゼント、なにを渡すか話してたの」
「ふーん。桃花、……好きなヤツいるんだ?」
「うんっ、……いるよ!」
……目の前に、ね。
「……あっ、桃花! ちょっとトイレいってくるね!」
「えっ」
そういって琉奈は教室を出ていった。……もしかして琉奈、気づいてる……??
「桃花。……好きなヤツって誰?」
「え、それはっ……いえない……」
いえるわけないでしょ、『私の好きな人は冬翔だよ』なんて。
「……そ。ならいい」
冬翔はそういって自分の席に戻って寝始めた。
「はぁ……春翔に相談したいよ〜……」
そう思っていたからか、春翔が私の方に歩いてきた。
「ねぇ桃花、琉奈ちゃんどこにいったか知ってる?」
「あー、お手洗いだよ……」
「ありがと! ……っていうか、桃花どうしたの?」
「実はクリスマスに告白しようと思ってるの……」
「そうなの!? 頑張って!! んじゃっ」
「え゙……」
いっちゃった……。クリスマス前は皆忙しいのかなぁ? そしてクリスマス当日。私は帰ろうとしている冬翔を引き止めた。
「――あっ、待って冬翔!」
「……桃花?」
ど、どうしよう。緊張していおうとした言葉を忘れちゃった……!
「あ……えっと……」
「……帰るか」
「え……?」
「“一緒に”ってことだ。いくぞ」
「……うんっ」
私は琉奈に『頑張るね』と伝えて、学校を出た。
「……いいのか?」
「えっ? なにが?」
冬翔はポケットに手をいれてそういった。
「……好きなヤツにプレゼント、渡さなくてもいいのか?」
「あ、……うん」
いつ渡せばいいんだろう……。
「お、雪降ってきたな。……さみぃな……」
「……冬翔! これ、……あげる!!」
私は5日間で編んだマフラーを渡した。
「……おぅ、ありがと」
「……それでね、私……伝えたいことがあるの」
「あぁ。なんだ?」
「私っ……、冬翔のことが好き……!!」
「え……桃花の好きなヤツって……」
いっちゃった……!!けど、フラれることはない……はず。
「…………ごめん」
「……え?」
私……フラれたの……?
「――なーんていうわけねぇだろ。俺も好きだ、バーカ」
冬翔はそういって笑った。
「……もうっ、フラれたのかと思ったじゃん! 冬翔のイジワル!!」
「前から好きって何回もいってるのに、フるわけねぇだろ」
あっ、そっか……。すると冬翔は私があげたマフラーを私の首に優しく巻いてきた。
「え? これ、冬翔にあげ――」
「違う。2人でってこと」
そういって冬翔は残りの半分を自分の首に巻いた。
「な。これで桃花も暖かいだろ?」
「……うん」
「あとは…………こうすればもっと暖かいな」
冬翔は私の手をぎゅっと握ってそういった。
「……冬翔、大好き!」
「……おぅ」
私達は雪がどんどん降る街の中を通って帰った。
〜琉奈side〜
「――春翔くん、桃花うまくいったかなぁ?」
私は今、春翔くんと私の家のリビングにいる。『クリスマス、一緒にいようよ』と春翔くんがいってきたからだ。……ドキドキするな、一晩ずっと一緒だなんて……。
「大丈夫だよ、あの2人なら! だってどっちかが告白すれば両想いだから付き合えるし☆」
「ていうか、そもそも桃花の好きな人は冬翔くんなの?」
「うん、冬翔だよ。この前は2人で映画観に行ったんだって♪ ……まぁ、一応帰ったらうまくいったか聞くんだけどね♪」
そのあと春翔くんはゲームをしたり勉強したり、テレビを見たりしていた。私はその間に、春翔くんが好きそうな夕食を作った。
「ん? この匂いはもしかして、カレーライス?」
春翔くんはゲームをやめて、夕食を作っている私の方にきた。
「うん! 春翔くん、カレーライス好きかなって思って」
「ホント!? やった〜! 僕、カレーライス超好きなんだ♪」
「よかった♪ さてと、食べよっか春翔くん!」
私達は夕食を食べ終わったあと、お風呂に入って寝室にいった。
「てか、冬翔ってホントに素直じゃないよね〜……。琉奈ちゃんとも仲良くしたいらしいけど……」
「そうなの? 私、てっきり嫌われてるのかと……」
「まぁ、冬翔が女子を嫌ってるのは本当だけどね」
確かに、冬翔くんが女子と話してるところはあまり見ないな……。
「ま、いっか☆ ……もう10時だし寝よっか」
春翔くんはそういって2人〜3人くらいが入って寝れるベッドにむかった。
「……おいで、琉奈ちゃん」
「うん、……きゃあっ!!」
すると、私は春翔くんにベッドに押し倒された。
「春翔……く――」
「……琉奈」
いきなりの呼び捨てに驚いていたら、春翔くんに口を塞がれた。
「……琉奈可愛い、大好きだよ」
「私も大好きだよ……、春翔くん」
私達はとてもリラックスできるBGMを聴き、抱き合って寝た。
そして休みが明けて1月中旬。
「ねぇ琉奈、今度デートしない!?」
体育が終わって着替えていると、桃花がそういってきた。
「え、デートって……」
「私達と春翔達で買い物にいくの! いく?」
「うん、春翔くん達もOKしてたの?」
「もちろん!!」
「……あっ、琉奈、桃花!」
教室に戻ると、春翔くん達がきた。
「あっ、いつなら空いてる? デート」
「僕達はいつでも空いてるよ〜」
「そう? ……じゃあ明後日に決定☆ このあと授業ないし帰ろっか!」
私達は荷物をまとめて学校を出た。私と春翔くんは、桃花達の後ろを歩いていた。
「……あ、冬翔私があげたマフラー使ってくれてるんだ!?」
「あぁ。桃花はマフラーとかしねぇの?」
「うん、家に一応あるけど使ってないんだよね。さすがに今日は寒いな……」
桃花がそういってくしゃみをすると、冬翔くんは自分のマフラーを半分首に巻いて、残りの半分を桃花に巻いた。
「寒いならしてくりゃいいじゃねぇか。心配させんな」
「……ありがと冬翔!」
桃花はそういって冬翔くんの左腕に抱きついた。冬翔くんは『……別に』といっていた。
「……桃花と冬翔くん、ラブラブだね〜……」
「じゃあ僕達も“ラブラブ”する?」
「えっ?」
春翔くんの方をむいた瞬間、目の前が暗くなった。……春翔くんがキスをしてきたから。
「ね? ラブラブでしょ?」
春翔くんはそういってニコッと笑った。前を歩いていた桃花達はニヤニヤと笑った。
「ラブラブですね〜♪」
「もっ、桃花っ……!!」