「琉奈ちゃん、パフェ好きなの?」
私がパフェのメニューを眺めていると、そう聞いてきた。
「うん、作ったことないから作ろうかなって思って……」
「そうなんだ〜……あっ、僕のチョコケーキ少しあげるから琉奈ちゃんのチーズケーキ少しちょうだい♪」
「うん、いいよ!」
なんか……こうやって春翔くんと話したり一緒にいると嫌なこととか忘れちゃうなぁ……。春翔くんはケーキを頬張っていて、とても可愛らしい。……って、男の子に『可愛い』はダメか。
「……あのさ琉奈ちゃん」
「うん?」
私がチーズケーキを食べていると、春翔くんがニコニコ笑顔でそういった。
「……もうすぐ夏休み……だね」
「? うん」
「夏休み……遊べる?」
「うん、遊べるよ」
「えっと……あの……そのっ……」
春翔くんどうしたんだろう?顔赤いし、目が泳いでるし……
「あのさっ……、2人で……花火大会にいかない……!?」
!!春翔くん、上目遣い……!可愛すぎる!!……って、返事しないと!
「うん、もちろん!」
そういった瞬間、自信なさげな顔が、ぱあぁぁっと明るくなっていった。春翔くん、表情がコロコロ変わって面白いなぁ……。
「よかった〜っ!! ムリって言われたらどうしようって思ってて……」
「大丈夫だよ、私いつも暇だからいつでも遊べるもん!」
「……じゃあ、この前の待ち合わせ場所で……いいよね?」
「うん!」
「……じゃあ食べ終わったし店でよっか」
私達は会計を済ませて外に出た。
「琉奈ちゃん、今日はありがとね、色々と……」
「ううん、大丈夫! 私、春翔くんのことが好きだから……」
「……!! えと、それって……」
「……えっ?」
私、なんか変なこといった?
「いやっ、なんでもない! じゃ、じゃあね琉奈ちゃん!」
そういって春翔くんは走って帰っていった。
私は翌日、なにか昨日あったかを聞かれた。
「桃花……私っ……」
「うん? どうしたの? お腹痛いの?」
「違うよ。……なんかさ、最近胸が苦しくなるの。春翔くんといるときとかは特に……。これって……」
「恋だね。……っはぁ〜、やっと気づいた! 遅いよ琉奈〜!! ……で、昨日は何かあった!?」
桃花は興味津々な目で聞いてきた。……私、恋してるんだ……。
「進展っていうのかわからないけど、……夏休みにある花火大会に2人でいかないかって……」
「よかったじゃん! じゃあさ、……告白……しちゃえば!?」
「え!?」
「だって春翔、絶対琉奈のこと好きだもん! フラれることなんてないよ!!」
「……うん。私、……頑張って告白してみる!」
「……うん、頑張れ! 私、……応援してるからねっ!!」
そういって桃花は教室に戻っていった。
そして時は過ぎ……。
「……よしっ、準備OK! マロ、いってくるね」
私は朝顔の柄の浴衣をきて、ナチュラルなメイクをして待ち合わせ場所にいった。……春翔くん、もうきてる。
「春翔く〜ん! 久しぶり〜っ!!」
「あっ、琉奈ちゃ……」
?どうしたのかなぁ?春翔くんは私を見てぼーっとしている。
「……春翔くん?」
「……あっ、ごめん、浴衣姿似合ってるなーって思って」
「!! ……そ、そう……?」
「うん! じゃあ、いこっか」
私達は屋台が沢山並んでいる道を歩いた。私は綿あめ、春翔くんはリンゴ飴を買って食べた。
「……あっ、春翔くん! 金魚すくいやろうよ!」
「うん!」
私達は金魚すくいのおじさんに器とポイをもらってやり始めた。
「うーん、やっぱ大きいのはとりにくいね〜……って、春翔くん!?」
春翔くんの器には沢山の金魚が……!!私も負けてられない、頑張らなくちゃ……!と思ってすくった瞬間。
「……あっ、破れた……」
「はいっ、おまけ」
私はおじさんから金魚をもらって春翔くんと再び歩いた。
「うぅ……1匹だけかぁ……」
「……僕がとった金魚、あげよっか?」
「えっ……、いいの?」
「うん! こんなに家に持って帰ったら冬翔がうるさいし」
「そっか……じゃあもらうね、ありがとう春翔くん!」
私達が屋台が並んでいる道を歩いていると、春翔くんの手が触れた。
「! ごっ、ごめ……」
「……手、繋ぐ? 人多いしはぐれないように」
「う、うん」
「……あっ、琉奈ちゃん! もうすぐ花火打ち上がるからこっちにいこう!」
春翔くんは私の手を優しく握り、川の近くに来た。そこはあまり人気がなくて、少し暗かった。
「ここね、あまり人がこないから見えやすいの! しかもあっちより暗いから、より花火がキレイに見えるの!」
春翔くん、地元だから詳しいんだ……
「あっ! 琉奈ちゃん、花火が打ち上がったよ!」
春翔くんにいわれて空を見上げると、色とりどりの花火が打ち上げられていた。
「キレイだね」
春翔くんはそういって私の方を見て、にっこりと笑った。
「キレイだね」
もう、時間を止めてずーっとこうしてたいな……。私、……告白しなきゃ……!!私はドキドキしてる胸をおさえて、口を開いた。
「すっ……、好きです!」
そういった瞬間、今までで一番大きな花火が打ち上がった。……春翔くんに伝わったかなぁ……?
「……今の花火、すごく大きかったね! ……琉奈ちゃん、どうしたの?」
春翔くんは花火のようにキラキラしてる笑顔でそういった。
「……ううん、なんでもない……」
私は少しぎこちない笑顔でそういった。伝わらなかった……。けど私はなんとなくホッとしていたのだった。
〜桃花side〜
「……琉奈、今頃春翔と楽しんでるのかな」
普通なら喜ぶところだけど私は喜べない。だって私は、……好きだから、アイツのこと。自分の気持ちが分からないで琉奈にアドバイスして応援しちゃって、胸が痛い。
「……いってみよう」
私は家を出て花火大会がやっているところに走った。そして、春翔と琉奈が手を繋いで歩いているのを見た。その瞬間、私の瞳から熱いものが溢れだした。
「私……泣いてる……?」
私は家に向かって走り出した。……あの子の方が可愛い。そんなの知ってる。……けど、だけど。
「上手くいかないで……」
〜冬翔side〜
春翔って、青空のこと……好きなんだよな。じゃあ……桃花はどうなんだ?そう俺はふと思った。
「ちょっと散歩にでもいってくるか……」
俺は外に出て、春翔がいる祭りがやっているところにいった。春翔は青空の手を繋いで歩いていた。……いい感じなやつらだな……。それに比べて俺は……っ、
「……ん? ……あれって」
桃花……?何でここに……。俺は桃花に声をかけようと思った。が、桃花は春翔達を見たあと走っていった。……涙を流して。
「……なんで……春翔なんだよ……」
俺が好きなのは……桃花なのに。
〜琉奈side〜
「はぁ〜っ、今日は楽しかったね、琉奈ちゃん!」
「……あっ、うん! また来年もいこうね!」
さっきの告白以来、私はぼーっとしている。
「じゃあ春翔くん、またね!」
「うん! またね〜!」
そういって春翔くんは手を振って帰っていった。
――数週間経ったある日。
「あっつ〜〜い……。アイスないし……」
8月中旬。私はフローリングの床で寝そべっていた。フローリングの床は、ひんやりしてて気持ちいい。……水浴びしたい……水……プール!そうだよ、プールにいけばいいんだ!!……でも、誰といく?桃花は忙しくて遊べないらしいし、冬翔くんは……うん、ムリだよね。ってことは……。
「……春翔くん」
……しかいないよね。私は春翔くんにメールをした。2分後、『うん、いく!』と返ってきた。私はクローゼットから水色のフリルがついてる水着をバッグに入れて、いつも待ち合わせ場所にいった。
「琉奈ちゃーん! 珍しいね、そっちから誘ってくるなんて」
「うん、ちょっと水浴びしたい気分だったから……」
そうやって話していると、広くて有名なプールについた。私と春翔くんは更衣室に入って水着に着替えた。私、結構大胆なの持ってきちゃったけど……変じゃない……よね?
「お待たせ春翔くん!」
「琉奈ちゃん、着替えたの? 上着っていうかパーカーきてるけど……」
「あははっ……、恥ずかしくってつい……って、きゃあっ!!」
すると春翔くんは私が着ていた上着を脱がしてきた。
「もう、焦らさないで早く脱ぎなよ〜……って」
春翔くんは私のパーカーを脱がしたあと私を見て固まっていた。……やっぱり変だったかなぁ……?
「……反則でしょ、それ」
春翔くんは顔を腕でおさえて呟いた。
「? なに?」
「なっ、んでもない! じゃあ、あれ乗ろうよ!」
春翔くんが指をさしていたのはジェットコースター。しかもなんか他のより大きいし……!?
「琉奈ちゃん、僕の後ろに座って腰に腕まわして?」
「う、うん……」
やばい……!春翔くんにすごいくっついてて、ジェットコースターどころじゃない……!!
「いくよ! 琉奈ちゃん」
「え? ……って、きゃあぁぁっ!!」
春翔くんがそういった瞬間、どんどん落下していく。私はいつの間にか、春翔くんの体にぎゅっとしがみついていた。
「!! るっ、琉奈ちゃ……」
春翔くんは耳まで赤く染めてそういった。……って、春翔くん鼻血出てる!?と、思った瞬間。
――バッシャーン!!
……終わっ……た?よね。
「春翔くーん……? 大丈夫……?」
「えっ、あっ、うん! だだだだ大丈夫だからっ!」
な、なんかさっきより顔が赤いけど……大丈夫かなぁ?
「琉奈ちゃんっ! 次あれ乗ろうよ!」
そのあと、私達は長い間プールで泳いだのだった。
そして長かったような短かったような、よくわからない夏休みも終わり、私は放課後、桃花と中庭で話をした。
「……夏休み中、春翔となんか進展あった?」
「えっとね、告白……したんだけど花火の音でかき消されて……。あと、2人でプールにいったよ」
「そっか、伝わらなかったんだ……。あのね琉奈……いっておきたいことがあるの……」
「……うん」
桃花は深呼吸をして心を落ちつかせている。……そんな重要なことなのかな……。
「私、……好きだったの」
「? ……誰を?」
……嫌な予感がする。でも、そんなことあるわけないよね。
「……春翔のこと、好きなの……」
桃花の瞳からはどんどん涙が溢れている。
「ずっと……琉奈に伝えないとって思ってたんだけど……いえなくて……」
「そうだったんだ……、私こそ桃花の気持ちに気づかないでごめんね……」
私の瞳からも涙が溢れだした。……桃花はどんな気持ちで応援やアドバイスをしてたんだろう。きっと、とても苦しかったんだろうな……。
「それでね……明日の放課後、2人で一緒に告白しない?」
「え……!?」
「琉奈、告白しそこねたんでしょ? 私も近いうちに告白しようかなって思ってたから……」
「……うん、桃花がそれでもいいなら……」
私達はメモ帳に『放課後、屋上に来てください』と書いて、春翔くんのげた箱にいれた。
「どっちがフラれても……桃花と私は友達だよ?」
「…………うんっ」
翌日の休み時間。
「ねぇねぇ、僕のげた箱にこれ入ってたんだけど……。なんだろう?」
春翔くんは呑気に私達に聞いてきた。
「「……。知らなーい♪」」
「え〜っ!? 僕、喧嘩売られてるのかなぁ? 僕じゃ絶対ぼこぼこにされる〜……」
「相変わらず……」
「鈍感だね、春翔くん」
そしてついに放課後。
「琉奈っ、先に入ってよ!」
「えっ、これ提案したの桃花じゃん!」
「うっ……じゃあじゃんけんで!!」
そして扉を開けることになったのは私だった。私は深呼吸をして屋上のドアを開け、春翔くんに向かって2人で走った。
「!! えっ、琉奈ちゃんと桃花!?」
「「好きです!!」」
突然のことに驚いているからか、春翔くんは私達を見て立ち尽くしている。
「春翔は、私と琉奈……どっちを選ぶ?」
「えっと…………」
「…………琉奈ちゃん…………」
春翔くんはそういって私の手を握った。
「春翔……くん……」
「よかったね、琉奈……!」
隣を見ると、桃花は泣きながら笑っていた。
「じゃあ……2人ともまた明日ね……!!」
桃花はそういって屋上を出ていった。
「あっ、もしかして手紙ってこれのこと……!?」
「うん、そうだよ」
「全然分からなかった……!!」
「春翔くんは鈍感だからねー……」
「そうなの??」
「うん」
私達はきれいな夕日に照らされながら帰っていったのだった。
★END★