「いや、いや、うそだよ、ね?!」

お医者さんに、つかみ掛かる。

お母さんが私を止めるが、振り払う。

「嘘ですよね?!嘘なんですよね?!
峠なんて、そんなこと言わないで!
予想を押し付けないで!いやだよ!」

心の中では、わかってた。

一命をなんとかとりとめたのが奇跡だって。

あんなに血を流してた和也。

本当は、わかってた。

だけど、
信じたくなかったんだ。

死というものを。