怯える彼女を手放したのは、大河さんの優しさだと思う。



愛した人が人であらず。



その現実を受け入れることなくそのまましばらくしてから亡くなったと。



「ショックがデカすぎたのか、床に伏せてそのまま。俺が殺したようなもんだ」

「それは違うよ。あたしは大河さんが何でも、好きだと思う」

「そうか?すげーな、お前」



大河さんなら何だって受け入れるよ。



だって、どんな姿でも、心は大河さんだもん。



「由乃は俺を恨んで死んだ」

「そうかもしれないけど、あたしは大河さんだけが悪いとは思わない。由乃さんだって、大河さんに申し訳ないって思ってると思うよ」

「なんでそう言える?」

「あたしが由乃さんなら、そう思うから」



抱きしめる力が強くなり、そのままベッドに倒れこんだ。



明日、文化祭なんだけど…。



キスの雨から逃げられなくて、大河さんに従い目を閉じる。



「お前がお前でよかった」



優しい声に力が抜け、胸がいっぱいになる。



「大河さんが大河さんでよかった。大好きだよ」



その日、寝たのは日が昇る直前だった。