面倒くさそうにそう言ったせいはゆっくりと廊下の方に向かっていく。


まったく、幼馴染の帰りぐらい待っててもいいんじゃないでしょうかねぇ?

せいの性格を思ってはぁ、とため息をついて背中を追いかける。




「ね、せい君。本当にバスケやらないの?」


廊下に出て4組の前で結人の事を待っていた時、おもむろに舞花が話しだした。

せいは少し驚いた顔で舞花の方を見下ろすと、またすぐに正面に顔を戻した。



「う〜ん、まだ正直迷ってるんだけどな。やっぱり、もういいかな…って思ってる」



「どうして?私、また応援したいな」



恥ずかしそうに、でもちゃんと舞花はそう言った。
なるほど、そういうことか。



せいは苦笑して、「ありがと」とだけ言った。

ここは、私がやっぱり何か言うべきか…。どうしようか…。



「そうだよー!せいやればいいのに!そしたら応援しにいくのにねー、舞花!」



「お前一度も中学の時応援に来た事無かったじゃん」



厳しい声でビシッと言われて、ゔっと言葉に詰まった。
確かに、せいの試合には中学の時一度も応援に行った事がない。


「だ、だって!いつも結人と試合被ってたから、私は結人の応援に行ってたし!あんたの方は舞花がいたんだ充分でしょ?!」



最もな理由を私は勢いに任せて言った。


「うん、知ってる。舞花はいつも差し入れしてくれてるからお前じゃ無くて良かったよ。あ〜結人可哀想」


「は、はぁ?!」



せいは哀れそうに丁度こっちに来た結人を見てそう言うと、今度は舞花に視線を移して優しく笑った。



「舞花いつもありがと」


舞花の大きな目はさらに大きくなってキラキラと潤んでいった。


「ううん!良かった!喜んでもらえてたみたいで」


凄く幸せそうに笑う舞花を見てまた笑顔になるせい。


もう、両思いなんじゃないの…?この2人。



そう思うと、私も心が暖かくなった。



「いや〜、ごめん!ホームルームが長いおばさんでさぁ」



結人が来ると、4組のドアにいるおばさんを指差した。
年配の、細くて厳しそうな女の人だ。