美海の想いに、深く共感した。自然と落ちたため息がそれを物語る。

「はぁ…、まさか美海と浅井サンのルートをたどることになるとはね…でもまぁ、美海たちみたいにラブラブにとか、無理な話だけど。」
「無理な話、なの?」
「…恋愛なんて、あたしにできるはずないよ。洋一には悪いと思ってるけど。」

 頑張りたい気持ちはある。でも、できるはずないと思っている自分もいる。

「…嫌いじゃないよ、洋一のこと。美海だって最初から浅井サンのこと、嫌いじゃなかったでしょ?」
「うん。」
「嫌いじゃない。…むしろ、人間としてすごくいい奴で、多分好きだよ。恋愛関係なしに。だからこそ、自分じゃだめだと思う気持ちが強まる。」

 すらすらと口から出ていく言葉たち。その言葉一つ一つを取りこぼさないように、真っ直ぐに聞いてくれる美海が頷いた。

「…全く同じじゃないかもしれないけど、でも…わからなくはないかな、その気持ち。」
「浅井サンに劣等感まみれだったってこと?」
「…劣等感…言われてみれば劣等感かも。圭介くんがどうしてそこまでしてくれるのかがわからなくて…。いい人だから幸せになってほしくて、それは自分じゃない方がいいんじゃないかってことは…何度も思ったけど、でも。」
「でも?」
「…でも、隣にいる自分は泣きそうなときもたくさんあるんだけど、…笑ってるの。楽しいな、安心するな、…嬉しいなとかいろんな感情をくれる。明季ちゃんにも、越前くんにもいろんな感情をもらうけど、でも…一番多いのは圭介くんなんだよね。」

 ほんのりと染まる頬に、美海の想いを知る。好きなのだということが全身から伝わってくる。

「…すごいね、美海は。あんなに自信なさげだったのにさ。今じゃそんなこと言うんだもん。」
「え、偉そうだった?ごめんね!」
「いや、全然。偉そうとかそんな風にはちっとも思ってないよ。…ただ、美海が眩しい。」

 元々可愛い顔立ちだったけれど、今はますますその可愛さに磨きがかかっているし(本人は知らないから、圭介だけが慌てている)物事の捉え方が前向きになった。そして、自分でも言っていたように圭介の隣にいる美海は無敵だ。心から信頼しきっていて、だからこそあの笑顔になる。

「…なれるかな、美海みたいに。」
「…私みたい、でいいの、明季ちゃん。」
「一番近い目標だよ、美海みたいになるのが。」

 素直になんて、もう何年もなっていない。気持ちを隠すことに慣れてしまった自分は、洋一に対してどんな距離で関係を築けばいいのだろう。