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「明季ちゃん!クリスマス、大丈夫でしたか?」
「美海。」

もともと1月9日に予定は入っていた。美海と会う約束だ。

「…それ、どういう意味?」
「え、えっと…え、越前くんと…どうなったかなって。」

そういえば洋一は美海に相談したとか言っていたような気がする。高校時代の自分を知る美海が心配するのも無理のない話だ。

「…美海に相談したって話だっけ、洋一。」
「あ、えっと…う、うん。越前くんからその…明季ちゃんのことを。」

 少し照れながらそう話す美海は、本当に変わった。今、とても幸せなのだろうということがよくわかる。

「…驚いたよ、そこがつながってたなんてさー。それに洋一なんてノーマークだったから。」
「…私もびっくりした、よ。でも…越前くんなら、…明季ちゃんの隣にお似合いだなって、思っちゃった、かな。私は。勝手だってわかってるけど。」

 少しずつ声が小さくなっていく美海に、笑みがこぼれた。

「…勝手だとか、全然そんなこと思ってないから。驚いたけど、洋一の本気もよく伝わったというか。嘘ではないみたい。」
「…どういう、ことですか?」
「あたしの予防線、堂々と突破してきて、あたしのいいように使っていいとまで言って、…た。」

 嘘みたいな、本当の話だ。美海にだって見せていない傷を、見せてしまったのは衝動だったのかもしれない。拒絶してほしいような本心ではそうじゃないような。あの時のアンバランスな自分を、本当は思い出すだけでも相当に恥ずかしいのに、それでも鮮明に蘇る温もりや優しさに安堵する。

「そっか…。越前くんが何を言ったか、どう接したのかわからないけど、…でも、圭介くんもそんな感じだった気がする。最初は、傍に置いといてくれればいいからって。…そんなこと言われても、自分みたいな何の取柄もない人間にそこまでしてもらうのが申し訳なさすぎて…距離が難しかったなぁって、今そんなことを思い出しました。」

 小さく笑って、美海はそう言った。