触れた瞬間に、わかりやすく震えた。

「…自分からでもだめなんだ。」
「…た、ぶん。ごめん。」
「いや、明季が悪いんじゃねぇし。」

 触れられるたびに傷つけるのに、それでも触れたいなんて思ってくれることが奇跡みたいだと思う。こんなに面倒な自分を受け止めようと、隣を歩こうとしてくれていることに何を言えばいいのかわからない。

「ゆーびきーりげーんまーん。あ、お前も歌えよ。」
「う、うーそつーいたーら。」
「「はーりせんぼんのーます!指切った!」」

 洋一とする、1回目の約束。それが指切りなんて、小さい子供みたいだ。

「…こっから、約束。」
「…わかった。」

 適度にとられた距離。それが今の、自分と洋一の正しい距離。これ以上踏み込まれても平気かどうかは、踏み込まれてみないとわからない。
 でも、そんな風に考えることができるようになったことも、明季にとっては奇跡みたいなことだ。

「…洋一は、思ってよりも律儀。」
「どんな想像だよ、俺。」
「もっと遊んでるのかと思ってた。」
「…あー…遊んでた時期がねぇとは言わねぇ。…けど、それ、もっと前だな。大学入ってからは、微妙。」
「高校生で遊んでたとか…なんか腹立つ。」
「腹立つってなんだよ!」
「…でも、納得した。」
「納得?」

 明季は小さく頷いた。

「人と関わるのが好きだから、遊べるんだよ、良くも悪くも。…詳しいことは知らないけど、でも、洋一の周りには自然と人があつまるでしょ?今、そんな高校生の洋一が見えた気がした。」
「俺に興味もってくれた?何でも聞いて。何でも話すよ。」

 テンポよく進む会話に、安堵する。関係は変わるかもしれない。それでも、今はまだ、この距離がいい。