「それで、話って何?」
「…あー…まぁ…その…。」

 言葉を濁してしまったのは、明季が思っていたよりもずっと直球だったからだ。

「…え?あれ、話があったんじゃなかったっけ?」
「そう、なんだけど…。」
「…珍しく、歯切れ悪いね、洋一。」

 明季が首を傾げてそう言った。

「…あ、もしかしてあんまり口に合わなかった?」
「…んなことねーよ。美味い。明季、自炊するタイプなんだ。」
「お金ないもん。仕送りはあんまり期待できないしね。」
「…そういう話を、しようと思って。」
「え?」
「明季のこと、教えてほしい。何でも。」
「…それ、は…できないって。楽しいこと、何もないんだよ?」
「…その前に、何でも聞いてほしいなとも思って。今日、浅井に会ったんだけど…色々考えて、俺にはもうこれしか思いつかなくて。」
「…ごめん、全く話が読めないんだけど。」

 それもそのはずだ。自分で勝手に決めて、思いつくままにここに来た。

「…明季に近付きたいのに、明季にどう近付いていいかわからない。そもそも、明季のことを知らない。でも、明季に全てを話せなんて酷だから、だから…俺に先に聞いてよ、何でも。」
「そもそもキョーミないって言ったら?」
「それ、普通にへこむわ。」
「…何でも話してくれるの?」
「嘘はつかない。」
「…あたしは、全てを話せるとは言えないけど、それでも?」
「…うん。それでもいいよ。話せないことが何かを知ることも、俺にとっては大事だから。」

 嘘はつかない。明季に約束する二つ目のことだ。