「ごめん、愛華・・・」

「ん、こっちも言い過ぎた。」


なんだか釈然としない空気。

気まずい、そう思った私は席から立ち上がると、愛華に言った。


「私、保健室行ってくるね」

「えっ、どっか悪いの?」

心配そうに顔をしかめながら、愛華はたぶん無意識で席を立った。

そんな愛華に、私はただ黙って手を振る。


「違うよ。ただ、一人になりたかっただけ」


へらへらと笑いながらそう言う私。

そんな私とは正反対に、愛華は更に真顔になった。

整った顔が、どんどんと青ざめてって、苦々しい表情に変わる。


「あの、気にしてるの?・・・ごめん、言い過ぎた。だから、その・・・」


もごもごと語尾を濁らせる愛華。


「違う、違うよ。気にしてなんか無い。愛華の言ってることは、そのとおり、だよ。」

愛華が気にしていると悟った私は、慌てて否定の言葉を並べると、「ただ眠たいの」と笑った。

だけど、まだ納得のいかないような顔をしている愛華。


「ほんと、ほんとだから。気にしないで」

「・・・、ほんとに?」


不安そうに顔を歪める彼女は、今にも泣きそうな顔をしていた。

「・・・う、ん」


“一人になりたいから”と言ったのは、少なくとも愛華の言った言葉を気にしてのことだ。

だから、私は曖昧に“うん”と頷いて教室を出た。