「小夜ーっ」

「・・・、ナオ?!」


教室の入り口から聞き慣れた声がして、私は振り向いた。

机の中の教科書やらノートやらを鞄に入れていた手が止まる。


「ナ、ナオ・・・」


遠慮もなしにG組の教室に入ってくるナオ。

私は目を見開いたまま、動けずにいた。


ナオが私の教室に迎えに来るなんて、珍しかった。

いつも私がナオがいるC組まで行って、教室の入り口の横でびくびくしながら待つ。


それは、今日もなんら変わりないことで、ぐっと息を呑みこんで勇気を振り絞ろうとしてたところなのに・・・。


「なに、ぼさっとしてんの。早く帰るよっ」

「え、あ、うん・・・」


ムスッとしたナオの不機嫌そうな表情に、私は慌てて残りの教科書類を鞄に詰め込むと席を立ち上がった。


「あ、愛華ばいばい!」

「あ、うんっ」


愛華の存在を忘れていた。

私は慌てて振り返り、愛華に向かって手を振ると、愛華は機嫌を損ねる様子も無く振り替えしてくれた。