「澪、私澪とエッチしたいの!」
勇気を出して、思い切ってそう伝えれば、無言で私を見つめること数秒。
「‥‥‥‥‥しないよ」
ふっと私から視線をそらして、澪はそんな事を言った。
となると、私の涙腺はもう崩壊寸前。
「なんでぇ‥‥‥‥」
必死で涙をこらえて澪の顔を覗き込めば、またふいっと視線をさらされて、膝から降ろされてしまった。
「なんでもなにも、瑠花としたくないからだよ」
私の目すら見ず、立ち上がって澪はキッチンの方へと行ってしまった。
Vネックのセーターの袖からチョコンと出た澪の指先にはいつの間についていたのか、線の細いペアリング。
だれとのペアリング‥‥‥‥‥‥?
なんてききたくてもきけない。
聞くまでもない気がする。
だって私は今しがた、澪にエッチを断られた女で、澪にはもう新しい好きな人がいるのかもしれない。
もうどうすればいいとか、何を聞けばいいとか分からなくなって持ってきていたお泊まりセットも携帯も置いたまま、勢いよく澪の家を飛び出した。