外ではほとんど酒を飲まない
メイコは



お酒は弱いと自負している。







本当に弱いのか


言われれば


そうでもないかもしれない。






しいて言うならば

弱いわりには飲む



いったところだろうか。








ワインや果実酒には詳しいし
香りや後味にうるさかったりする。



シンクの下にある奥から二番目の戸棚には
去年つけた梅酒が入っている。


あの瓶のふたは
少しべとついていて
持つ時は気をつけなきゃいけないのをいつも忘れてしまう








きっと
こんなことを知っているのは
メイコと俺だけなんだ



なんて
ふと考えてしまって
我ながらおかしくなる。








横では白ワインをグラスに注ぎ足しながら、上司のセンスの悪さやワインのまずさをなじっている。

そうかと思えば今度は自分の店舗の売り上げを自慢しはじめる。







酔ったメイコは実に冗舌だ。





普段からよくしゃべるから
あまり変わる気もしないのだが。



目の周りをほんのり赤くさせて
いつもより
優しくなるような気もする。




少し冷たい喋り方が

酒を注ぐと氷が溶けていくように
キラキラと輝いて

幸せそうになるせいだ。






テレビには
映画がうつっているが
見る気はさらさらないようで

今日の彼女の言葉を思い出す。





見たい映画があるんだけど
お酒でも飲みながら一緒に見よう




なんて
本当は酔った自分の世話をたのみたかっただけじゃないか。




全く

そうと分かっていながら
いいようにつかわれに来たのだから

まあそれも仕方がないか。






相変わらず
彼女はやたら幸せそうにちょっとずつ酒を飲みながら
話しを続ける。


聞いてみると
どうやら同僚が結婚するらしい。



「いやー、
いつの間にそんな....全然気づかなかったなぁ。でも幸せそうで
うらやましくなっちゃうよ」




うっとりしたようにそう言うと
じっと顔を覗き込んでくる

焦点はあっていないようで

ふんっ

と鼻で笑った。




もう耳の裏まで真っ赤にして
少しだけフラフラしているようだ。



大きく甘い黒目は艶やかで
はっきりと自分の顔を映している









《結婚しちゃう?》