翌朝。

朝起きた由宇は,
一目散に台所にいる
陽和のところに駆け寄った。

そして,足にぎゅっと
しがみついた。

「よかった」

「由宇…ちゃん?」

「せんせい…ぼく…
 きのう…ままの
 ゆめをみたんだ」

「…うん…」

「でも,ままは…
 きえちゃった…」

「…そっか…」

陽和は由宇の話を聞きながら
涙ぐむ。
そして由宇の頭を
優しくなでた。

「でもね,ひよりせんせいが
 ゆめのなかにでてきて,
 そばにいてくれるって
 やくそくしてくれたの」

「…うん」

「ゆめ…じゃ…
 ないよね…?」

陽和は大きく頷いて
由宇を抱きしめた。

「うん。だいじょうぶ。
 わたしは,ずっと
 ゆうちゃんとさくちゃんの
 そばにいるよ」

そういうと,由宇は
安心した顔で微笑んだ。

その様子を,朔は
笑顔で見守っていた。

「あ,朔ちゃん…」

「あ…さくちゃん,おはよう」

「おはよう」

朔は優しいまなざしで
二人を見つめた。

「あのさ,二人に話があるん
 だけど,朝ご飯の前に」

「うん」

由宇と陽和は頷いて,
朔に促されるまま
ソファに腰掛けた。

「2人に2つ,報告がある」

朔は,久々にきりっとした
口調で話を始めた。

「まず1つ目。

 旅行の行き先と,日にちが
 決まった」

「わー!」

「12月22日から1泊。
 天文台の近くのロッジを
 予約したから。
 夜は,天文台の望遠鏡も
 貸してもらえるらしいよ」

「わーい!やった!」

由宇は嬉しそうに
ガッツポーズをする。

「陽和は,大丈夫?」

「うん,楽しみ!」

陽和も嬉しそうに微笑む。

「そして2つ目。
 これは,由宇に報告。

 来週から…
 この家に,3人で
 住むことになった」

「え…それって…」

「ああ。
 陽和が…一緒に…
 住むことに…なったから」

「ほ…ほんと?
 ほんとなの?」

陽和は,優しくコクリと頷く。

「わー!わー!
 やったあ!!やったあ!」

由宇は陽和に飛びついた。

朔は,由宇の喜びように
ちょっぴり苦笑しながらも
二人の様子を見てホッとした。

「私もうれしい!
 由宇ちゃんが,こんなに
 喜んでくれるなんて…」

陽和はポロリと涙を
流しながら由宇をギュッと
抱きしめた。