シエラは朝食をとり終わって私室に行った。
お気に入りの鏡の前に立って、今日着る服を選んでいた。
ピカッ

「な、なに!?」

突然、鏡が強い光りを放ちだした。
なにやら、鏡から声がする。

「天界の姫君よ。私たちと共に戦ってくれませんか。」

とても美しい声の持ち主だった。鏡からこの声は発せられているようだ。

「待ってよ。あなたはだれなの?」

「それはまだ言えません。しかし、時が経てば必ず分かる時が来るでしょう。」

なぜ言えないのだろう。怪しい者かもしれない。

「戦うってどういうこと?なにと戦うの?」

「大昔、魔界で最強と言われていた"サタン一族"は封印していたはずなのですが、解けてしまっていたのです。なぜかはまだ分かっておりません。どうか力を貸して頂けませんか。」

「…いいわ。」

「ありがとうございます。では、その鏡に天界の紋章を指で描いてください。こちらの世界に続く道ができるはずです。」

「わかったわ。」

すらりとシエラの長い指がまるで踊るかのように強い光を放つ鏡の上で舞う。天界の紋章を書き終わったとたん、道が開いた。
ごくっ…。ここを通れば良いのよね。大丈夫かしら。

「姫君よ。どうぞこちらへ。」

「ええ。」

おそるおそる足を道の真ん中につける。いたって普通だった。安心したシエラは鏡の中に入った。すると、ぐにゃりと視界が歪んだ。あったはずの道がなくなり、シエラの体はどんどん闇に落ちて行く。シエラは闇へと落ちていった。