学校でレポートを仕上げて出てきたら、
この大雨だ。
そういえば台風が来てるとか、そんな話聞いた気がした。
雨は激しさを増し、傘もまともにさせない。
「ついてねぇ...」
傘をさすのはのはあきらめて
急いで近くの古本屋へ駆け込む。
古本屋といっても
こんな時間に店を開けているはずもなく
軒下で硝子戸に身体をくっつけるようにしてじっとしていた。
バイトしながら
一人暮らしの学生にそんな余裕もないが
今日に限って'空車'を掲げずに横切って行くタクシーに無性に腹が立った。
雨の音と暗さのせいで
どのくらいそうしていたのかわからない。
いったい今何時だ?
さびれた商店街の入口。
アーケードの真ん中に硝子の曇った時計があった。
街灯に照らされてかすかに文字盤を読むことができる。
―――24時を少し回ったところ。
時計をみると
辺りが急に静かになったみたいに
秒針の踊る音が聞こえてくるようなきがした。
時間だけが過ぎていく
ここから自分のマンションまで1キロ以上。
古本屋のおじさんが
急に思い立って店を開けてくれるのを
俺はここでは待つのか?
「マヂついてねぇ…」
途方に暮れていた俺の目に映った、
バー'Amelie'の看板。
こんな所にこんな店あったか?
小さく目立たないその店は
なんというかすごく…
いいカンジだった。
この激しい雨が少しでも収まるまで
入れてもらおうか。
運よくいけば、傘なんか貸してもらえるかもしれない。
右手に持った
ボロボロで折れ曲がったビニール傘に目をやった。
こりゃ
ひどいな。
傘を握ったまま
水溜まりのような道を歩いた。