「きゃっ!」
何かにぶつかって転びそうになった身体を足で踏ん張ろうとする、それがいけなかったようだ。
「痛っ…!?」
嫌な感覚を足首に感じてシャディアは目をきつく閉じた。なんとか転ばずには済んだが、無傷というわけにはいかなかったらしい。やってしまった、そう心の中で呟いた時だった。
「失礼、大丈夫ですか?」
俯き加減だった視界に差し伸べられた手が入り誘われるように顔を上げる。そこには真面目そうな青年の顔があった。この人にぶつかったのか、そう理解すると共に謝罪の言葉が自然と出てくる。
「すみません。急いでいたもので…。」
「畜生、どこいった!!」
まるでシャディアの言葉に被せるようにあの男の叫び声が強く耳に響いた。油断していた分、衝撃も強かったようで無意識に身体が跳ねる。声の音がさっきまでよりも近い、距離が縮まっているのだ。
「ほ、本当にごめんなさい!あのっ先を急ぎますので!…っ痛!」
逃げないと、そう思って足を踏み出そうとすれば右足に痛みが走りそれも叶わなかった。てっきりその言葉通りまた走り始めるのかと思っていた青年はシャディアの異変に気付いて首を傾げる。
「大丈夫ですか?」
「へ、平気です。お構いなく。」
手を出して断りの仕草をしながら何とかして逃げようとした。だがしかし。
「…いっ!!」
それでも足の痛みが邪魔をして思うように前へ進まない。足を強く痛めてしまったのだ、でもそんなことを言っている場合ではない。早く、早く逃げないと。
「待て!女!!」
あの男の声がだんだん近付いてきている。聞こえていないのに常に叫ばれている様な圧力を感じて心臓がばくばくと音をたてた。想像以上に痛みを訴える足を無視して進もうとするが、焦る気持ちから足が絡まりそうになり走るどころか上手く歩くことさえままならない。
「行け…シャディアっ!」
心の底から鼓舞をして自分を奮い立たせながらそれでも前を目指した。あの男に捕まっていいことなんかある筈がない。せめて身を屈めてやり過ごすなりなんなりして抵抗しなければいけないのだ。意地でも逃げ切ろうともがくが、いきなり背後から肩を抱かれて引っ張られてしまった。
「…きゃっ!」
「失礼。」
捕まった、そう全身の血の気が引いた瞬間頭上で聞こえた声に違和感を覚える。声の主は建物と建物の間にある小路にシャディアを連れ込むと壁になる様に通りに面した側に立った。
「…え?」
何が起きている?そんな疑問符が浮かんだと同時に、荒い足音が聞こえてあの男が近付いてくる気配を感じ取ってしまった。思わず身構えて荷物を抱える手に力が入るが、その足音は何でもなかったように通り過ぎていく。
それでもまた近くで立ち止まり苛立つような言葉を吐いて周囲から怪訝な目で見られているようだった。
「畜生…どこ行った!!?」
この通りは行き交う人が多い。誰かとぶつかったのだろう、シャディアに向けた様にその相手にも難癖をつけたようだが執着はせずに再びシャディアを探し始めた。それはシャディアの中で恐怖に変わる。あの男は確実にシャディアに強い執着を示しているのだと。
また遠くの方で苛立つ声を上げているのが聞こえるが緊張が解けることはなかった。
何かにぶつかって転びそうになった身体を足で踏ん張ろうとする、それがいけなかったようだ。
「痛っ…!?」
嫌な感覚を足首に感じてシャディアは目をきつく閉じた。なんとか転ばずには済んだが、無傷というわけにはいかなかったらしい。やってしまった、そう心の中で呟いた時だった。
「失礼、大丈夫ですか?」
俯き加減だった視界に差し伸べられた手が入り誘われるように顔を上げる。そこには真面目そうな青年の顔があった。この人にぶつかったのか、そう理解すると共に謝罪の言葉が自然と出てくる。
「すみません。急いでいたもので…。」
「畜生、どこいった!!」
まるでシャディアの言葉に被せるようにあの男の叫び声が強く耳に響いた。油断していた分、衝撃も強かったようで無意識に身体が跳ねる。声の音がさっきまでよりも近い、距離が縮まっているのだ。
「ほ、本当にごめんなさい!あのっ先を急ぎますので!…っ痛!」
逃げないと、そう思って足を踏み出そうとすれば右足に痛みが走りそれも叶わなかった。てっきりその言葉通りまた走り始めるのかと思っていた青年はシャディアの異変に気付いて首を傾げる。
「大丈夫ですか?」
「へ、平気です。お構いなく。」
手を出して断りの仕草をしながら何とかして逃げようとした。だがしかし。
「…いっ!!」
それでも足の痛みが邪魔をして思うように前へ進まない。足を強く痛めてしまったのだ、でもそんなことを言っている場合ではない。早く、早く逃げないと。
「待て!女!!」
あの男の声がだんだん近付いてきている。聞こえていないのに常に叫ばれている様な圧力を感じて心臓がばくばくと音をたてた。想像以上に痛みを訴える足を無視して進もうとするが、焦る気持ちから足が絡まりそうになり走るどころか上手く歩くことさえままならない。
「行け…シャディアっ!」
心の底から鼓舞をして自分を奮い立たせながらそれでも前を目指した。あの男に捕まっていいことなんかある筈がない。せめて身を屈めてやり過ごすなりなんなりして抵抗しなければいけないのだ。意地でも逃げ切ろうともがくが、いきなり背後から肩を抱かれて引っ張られてしまった。
「…きゃっ!」
「失礼。」
捕まった、そう全身の血の気が引いた瞬間頭上で聞こえた声に違和感を覚える。声の主は建物と建物の間にある小路にシャディアを連れ込むと壁になる様に通りに面した側に立った。
「…え?」
何が起きている?そんな疑問符が浮かんだと同時に、荒い足音が聞こえてあの男が近付いてくる気配を感じ取ってしまった。思わず身構えて荷物を抱える手に力が入るが、その足音は何でもなかったように通り過ぎていく。
それでもまた近くで立ち止まり苛立つような言葉を吐いて周囲から怪訝な目で見られているようだった。
「畜生…どこ行った!!?」
この通りは行き交う人が多い。誰かとぶつかったのだろう、シャディアに向けた様にその相手にも難癖をつけたようだが執着はせずに再びシャディアを探し始めた。それはシャディアの中で恐怖に変わる。あの男は確実にシャディアに強い執着を示しているのだと。
また遠くの方で苛立つ声を上げているのが聞こえるが緊張が解けることはなかった。