ふと思い出し、恐ろしくなった蒼子は歩く速度をさらに速めた。
しかし、ふと蒼子の耳になにか声が聞こえてくる。




しくしく・・・





それは、誰かがすすり泣く声。
その声は、分かれ道の向こうから聞こえるようだった。




「だ、誰・・・?」





しくしく・・・



それでも、そのすすり泣く声は止まることなく聞こえてくる。
誰かが、迷い込んでしまったのだろうか。


もしそうだとしたら、そっちの方向は危険だと知らせてあげた方がいいのかもしれない。


とても怖い。
それでも、泣いている人を放って逃げることはできなかった。



意を決してきた道を少し戻り、分かれ道のもう一つの道へと歩みを進めた。
住職の話が頭によぎったが、それなら尚更この泣き声の持ち主も一緒に逃げなければ。




蒼子は震える身体を抑えながら奥へ奥へと泣き声をたどっていった。