バチがあたった。
どうもできない。
自分で握っていたあの緩い手、それは相手からももちろん簡単に話せるもので、私しか話せないわけじゃない。
だから、楓ちゃんも千佳ちゃんも私から離れ、クラスのみんなからは『かかわらないで』という目で見られ・・・。
仕方がない。

重田がいたら・・・。
重田がいたら、こんな世界はない。
「もしも」という世界はこの世に存在しない。

人は妄想の中で、自分が主人公だと感じる。
それは、自分の感情しか細かくわからないから。
表情と悩みの言葉、これを見て聞いただけで人は何がわかるというのか。
『心友』?
ムリがある。
お前らは心が読める同士かって。

仲の良いという言葉は現代の社会では軽い。
だから、先生はいうのだ。

『自分が一人の時にいてくれる人こそが友達』

このクラスメイトも、今離れていった千佳も楓も私の友達じゃない。
柚ちゃん、桜ちゃんは最後まで私と共に戦った。

この二人が、友達・・・。


・・・違う。

今、私の目の前にはあの4月の印象の彼女がいる。

目もパッチリ二重で・・・髪の毛もショートだけど手入れもされている。香水までいかないほんわかなやわらかい優しい匂い。 制服は、真面目に着こなしているのにすごくかわいい。


真っ赤な色が似合う彼女の名前は・・・田村 愛。

「それくらいで美織から離れるなら最初から美織といないでよ。」

「は?お前に関係ないじゃん」

蒼井ちゃんが言い返す。

「あんたもだけどね。マジで、重田の代わりに愛が美織のこと守るから。お前ら、美織に逆らってんじゃねーよ」

・・・泣きそう。
人殺し・・・けど、今は甘えてもいい?重田。

パンパンッ

「子供みたいなやりとりはもうやめよ。それより、今自習じゃなかった?勉強している人いるし、そういうこと言うのはやめよ。いやでも出てきた人も少なくないよ」

桃香ちゃん・・・。

「桃香ちゃん、ごめん」

「美織も座ってね。この教室にいたくないのはわかるけど我慢していて。私もいるし、大丈夫。美織と田村さんを敵対するような真似はしないよ」

「あ、ありがとっ!」

「ううん、美織は優しいもん。わかってるからね。考え込まないで、んで、座ってね!」

「うんっ!」

「・・・桃香も、仲間?」

愛ちゃんが不満そうな顔で桃香ちゃんを見る。

「仲間とかじゃないよ。できれば、中立の立場にいたいけど、どちらかというとそっちにつくよ。いざとなったらね。」

「ん」

少し、ニコッと愛ちゃんは口角を上げる。