桜ちゃんは、疲れで目はしばらく覚まさないと医者に言われた。
桜ちゃんの母は、『死んでないならいい』と言っていた。
一見、冷たいお母さん・・・と感じた私だが生まれつき少し耳が良い私は桜ちゃんのお母さんが泣いている声を聞いた。
暖かく、優しいお母さんだった・・・。

明日、緊急私のクラスだけ学校がある。午前中だけ。
先生もさすがに、黙っていられない状況になってきたのだ。

あの少女の手のせいで・・・。




―翌日―

久しぶりの夏服の制服を着て私は、登校する。
・・・重田はいない。
柚ちゃんもいない。

・・・私のクラスは、二人死亡、一人病院、という夏休み。



教室に入ると、さすがにみんな静かだった。
女子は、また仲良いグループに分かれてしゃべっていたり。
・・・その内容もヒドイもので、一切死んだことに触れていないのだ。
わざとかもしれないが、あきらかにそのグループだけが芸能人の話をして楽しんでいた。

千佳ちゃんと、楓ちゃんはヒソヒソと二人で喋っていた。
・・・あそこに入ろう。

「おはよ、二人とも」

「あ、おはよ」
「おー・・・美織じゃん」

元気がない。

そして、千佳ちゃんがさらに声のボリュームを下げる。

「・・・重田のこと、大丈夫?」

・・・あ、心配してくれてる。

「だいぶ・・・大丈夫になったよ。ありがと。」

「うん、重田もずっと元気がない美織を見てたら悲しむからね」

「・・・そうだね」



「そーいえばさ、美織、重田のことだいじょーぶ?」


みんな小さい声で喋っているのに、一人だけ大きな声を出して喋りかけてきたのは、蒼井ちゃん。

一斉に、重田と私のことを話し出すクラスの人たち。
聞こえたのは、
『じゃあ、美織も事件に関係あるの?』
『事件じゃないよ、自殺』

・・・その通りだけどさ、やっぱいわれるのと自分で考えるのは違う。




「美織、大丈夫?」

「・・・え?」

・・・あ、い・・・ちゃん?

「美織が悲しんでるのに、何その態度?ふざけてんの?蒼井。」

「あんたこそ、何?」

「美織の表情見なさいよ。この教室の中にいるみんなの顔を見なさいよ。みんな、何をしゃべってるの?全部が美織のせいって言ってるみたいじゃない。」

・・・愛ちゃん・・・。
なんで?泣きそう。
愛ちゃんが、私の愛する人を殺したけど・・・。
今、私を守ってくれているのは、愛ちゃんだ。

「謝りなさいよ。そうしないと・・・・・・」

「はっ!?あんたに言われて謝るかばーか」

口喧嘩はまだ続く。