〈桜 side〉

柚が倒れる。
公園の美しい砂の色は、柚が倒れた部分だけ少しずつ赤色になる。
・・・血の色。

ドサッ

柚が倒れてハッとする。

美織は・・・泣いていた。

「・・・ごめん、柚・・・ちゃん。守・・・れなくて・・・」

「はぁはぁ・・・はぁはぁ・・・」

柚の息は口でしていて、大きく肩を上下に動かして息をしていた。
尋常じゃない。

「桜ちゃーん♪どうどう?親友が殺された今の気分!」

・・・サイテー。
けど、私の足は動かない、一歩も。
恐怖と悲しみ。
今の私の感情だ。

中学のころ、一緒に部活をして共に戦った。
高校では、お互いに離れたくないという思いで私が必死で勉強してここまできた。
なの・・・に。

「桜・・・ごめ・・・」

柚の声。
きっと、最後の・・・会話。

私は柚に駆け寄る。

「柚っ!」

「桜・・・はぁ・・・はぁ・・・ごめんね」

「柚!死なないで!」

「へへ・・・桜、勉強してきたん・・・だよ?」

「何を!」

「愛してくれて・・・ありがとう・・・・・・だっけ・・・」


私の好きな漫画の言葉。
大好きなこの言葉。
まさか、こんな時に言われるなんて・・・。

「柚は、桜が大好きだよ・・・・・・・」



柚の体温は時間がたつにつれ、だんだんと冷たくなっていた。
柚の最後の言葉・・・

『柚は、桜が大好きだよ・・・・・・・』

許せない・・・許せない許せない!

・・・コロシテヤル。
コロシテヤル。



馬鹿な私は、田村に飛び込んだ。
田村が指にカッターの``刃``をつけているとはしらずに。






この日、私と柚は、あの大好きな公園で死んだ。
自分の最後に見た光景は・・・田村が満足そうに微笑んでいるところ。
柚が泣いていたところ。

・・・美織が泣き叫んでいたところ。

・・・大好きだったよ、柚。美織。
お父さん、お母さん、弟、猫。

先に死んでしまってごめんね・・・。

16歳の短い生涯は幕を閉じる。