「んー・・・確かに、ココは落ち着けるな」

「・・・重田・・・人の部屋だよ。」


「あぃ。」

重田は、私の家にきて喋りたいといった。
これは、ほとんどが私のせい。
私が、重田と付き合ってなかったら重田は生きていた。
重田に私の弟のことを話さなければ、重田は生きている予定だった。

あの場で、あの時に喋っていなければ健二も死なない予定だった。

それを狂わしたのは私の小さな思いから。
その思いをずっと胸におさめて生きてきたのに今、開いてしまったから。

理由は、数多い。

だから、今を生きるんだ。
今を一緒に生きる。
冷房の風よりも自然の空気、風に揺らぐ木の音。

その一つ一つが重田の大切な思い出になる。
その思い出を私がもっと、最高に仕上げるんだ。

それが、唯一の私にできることかもしれない。

「おーい、美織ちゃーん」

「ぅわっ!・・・ごめん。」

考えすぎていて、重田との距離に気が付かなかった。
近いよっ!バカッ。

「俺も、十分に警戒するからさーお前もそう考えんな。」

「・・・うん・・・でも」

「『でも』はいらない。俺がするって言ってんだ。」

「・・・重田」

「ありがと、一緒に今を生きていてくれて。」


本当に、思いは重なるんだね。
私もね?今・・・そう思ってたんだよ?

「こっちこそ・・・思いをぶつけてくれてありがとう」

「はははっ、これマジで俺が死ぬみたいじゃん」

・・・死なないよね。
でも、言いたいよ。
ドラマとかで、最後に喧嘩したとか、後悔の場面がある。
それだけには、なりたくないんだ。

だから、今伝える。

「重田、生まれてきてくれてありがとう。大好きだよっ」




この日、重田は家に帰る途中で車にはねられた。
意識不明の重体で、犯人は愛ちゃん?

違う、コレは本当に偶然だった。
たまたまひき逃げの犯人が重田をひいた ということ。

重田は、愛ちゃんではなく一般の男性に殺された・・・はずだった。