「………」


「ん、なに?俺の顔に何かついてる?



マジマジと見ていた私を不思議に思ったのか、首をかしげている。


「ひゃっ」


きょとん、とした顔をそのまんま私に近づけてきたことに驚き、私は後ずさりをした。


「あ、本橋!」


一一ドンッ


勢い余ってそのまま転倒。


「大丈夫かよ?」


ケタケタ可笑しそうに手を差し伸べてくれる吉田くん。

恥ずかしさがこみ上げて、顔が熱い。


「笑わないでよ…」


たぶん、私、耳まで真っ赤だ。


吉田くんのマイペースに飲み込まれると、ろくなことがないんだから。


私はムッとした表情を作り、吉田くんの手を取った。


「イタッ…」


立ち上がった瞬間、右足に痛みが走る。

恐る恐る痛みが走った箇所を見てみると、少し腫れている。


「転けた時に捻ったみたいだね
本橋、歩ける?」

「これくらい、平気」


なんて強く出たものの、ズキズキと痛む足が前に出ない。


「しょうがないな〜」

はぁ〜、と息を吐いたかと思えば、吉田くんは私に背を向けてからしゃがみこんだ。


「乗って!」

「えっっ!!」


背中に乗れ。と、自ら背を叩く。


そんな私たちの様子に、周囲もざわつき始める。

冷やかしの声や女子の羨ましがる声。

さらに恥ずかしが増す。


「い、いい!大丈夫。一人で歩ける!」

「うるさい。いいから乗れ!」

「ちょっ!!吉田くん!」
「黙らないと、お姫様だっこにするよ?」


無理矢理に背中に私を引っ張り、そのままおんぶをされ、吉田くんは保健室へと向かう。


そんなこと言われたら、黙らないわけにはいかない。


授業中の廊下は静かで、吉田くんの足音が響くだけ。


「重くない?」

「ん?別に。てこ、むしろもう少し重くてもいいくらい。」


思いのほか広い背中と肩幅。

いつも眺めてる景色とは違う。

吉田くんの目線。

なんだかそれが新鮮で、胸がドキドキした。