「私、料理苦手なの。ピザでもとる?」
ジェニファーが、タンクトップにホットパンツという、セクシーな格好で床の上に転がる。
「いいですね」
翠はピザのメニューをテーブルの上に開いた。
「日本のピザは、どんな味?」
「アメリカと一緒ですよ。あ、でも照り焼きとか、たらことか、不思議なのもあるかも」
「よしっ、じゃあソレ。あとビールもね」
ジェニファーがウィンクする。違和感のない仕草。これがアメリカ人ってことなんだろうか。
「ビールも?」
「そうよ」
「だって、颯太さんは『警護中は絶対に飲まない』って」
翠が言うと、ジェニファーが呆れたという顔をした。
「ソウタは、クレイジーね」
「そう……ですか?」
「あのビール好きが、ミドリのために我慢してる。私は無理よ。そもそも一杯や二杯のビールで、ダメになったりもしないしね」
「へえ」
ビールが好きだったんだ。ちっとも知らなかった。飲みたいだなんて、一言も言わないし。
デリバリーに電話をかけ終わると、ジェニファーが「シャワーでも入ってきたら」と言った。
「ジェニファー、先に入れば?」
「いいの? じゃあ」
遠慮も何もなく、ジェニファーが立ち上がった。
「どうぞ」
ジェニファーがバスルームに消えると、翠の頭は大翔へと帰っていく。
容疑者の一人?
まさかそんな、バカなことあるわけがない。
だって、あの大翔よ。
私が深く愛した、大切な人なんだから。