朝、いつものように起きて、大きく伸びをする。汗をかいた額を拭い、髪をかきあげて、ベッドから歩き出した。そして、窓のところまで辿りついて、「あ、ちがう」と声を出した。
まずい。危うくまた警報機を鳴らすところだった。
翠は掴んだカーテンを慌てて離した。
身体に染み付いた習慣をふと考え直すほど、だんだんにこの生活に慣れてきている。翠はそれを嫌だと思う反面、しっくりしてる自分も感じていた。
変なの。こんな新婚生活、ありえないのに。
翠は手早く着替えて、リビングの扉を開けた。
「おはようっ」
颯太とは異なる、景気のいい声が挨拶をした。
翠は「ん?」と、その人物を凝視する。
「あれ? 日本語あってるよね?」
その女性は、青い瞳を大きく開いて言った。
「あってるよ」
今日はなぜかスーツに、すでに着替えている颯太が答えた。
「……おはようございます」
翠は少々押され気味のまま、朝の挨拶をした。
「これがミドリね。写真より、綺麗じゃない」
女性はそう言うと「私は、ジェニファー。よろしくね」と言って、手を差し出した。
「は、はあ」
ミドリは言われるがままに、彼女の手を握った。
綺麗なブロンドに、蒼い瞳。背は高く、颯太と並んでも釣り合いが取れる。
翠は颯太に説明を求める眼差しを向けた。