5年の間に大人になっていた彼。


明るかった髪はきれいな黒髪に。


質のいいシャツに、デニム。


あぁ。でも香りは変わってない。甘い匂い。


私は昴に抱きしめられていた。



「本当に、梨子だよな。」


昴は私の頬に手を添えて、見つめてくる。



「すげー綺麗になった。」



そう言って笑った。


大人になってるけど、この笑顔は変わってない。


私の大好きだった笑顔だ。


でも。



なんでか、喜べない。


まだ、頭の中が整理出来てなくて


混乱する。


「……とりあえず、座ろうよ。」


私は昴の胸を押し返す。


昴は、一瞬戸惑ったように感じたが、『うん。』と言って、ブランコに腰掛けた。



「本当に来てくれたんだな。マジで嬉しい。」


昴は、軽くブランコを揺らしながらはにかんだ。


「久しぶりの再会で、浴衣だもん。今にも押し倒しそう。」


そう言って流し目で見てくる。



5年前にはなかった大人の色気にドキドキする。



「……っていうか、よく会えたね。時間決めてなかったのに。」



ドキドキしているのを悟られないよう
昴から目をそらした。


「会えるよ。だって、俺朝からいるもん。」



「はぁっ!?朝から!?」


信じられない。だって何時間ここにいるのよ。



「なんで………そこまでするの?だって私達はもう……」



終わっているでしょう。


思い出の中の二人でしょう。



そう、続けたかった。


でも昴が悲しそうな顔をするから言えなかった。