「どうしたの、レオ君?
なんかあった?」
突然帰ってきた俺に驚く日葵は、ソファーに座った俺に心配そうに聞く。
(お前のせいだろ。)
そう思っても言えない俺は、適当に嘘をつく。
そんな俺を疑いもせずに素直に信じた日葵は、落ち込んだフリをしている俺を慰める。
「元気出して、レオ君。
タカシ君と遊べなかった分、お姉ちゃんと遊ぼう!!」
そういう日葵は、いつもの笑顔に戻っていた。
(これだ。)
その笑顔を見た瞬間、何とも言えない安心感が、俺を襲う。
「うん!
ぼく、手洗ってくるね!」
「うん!」
なにかがバレるのが怖くなって、俺は洗面所へ駆け込んだ。
洗面所の前で、踏み台の上に立って、手を洗う。
走って汗まみれになった顔も洗って、俺は顔を上げた。
洗面所の鏡に映し出された自分の姿に、ため息をつく。
「あの笑顔は、お前のもんだよな、レオ。」
日葵といるレオの時間が増えるほど、俺の中の冬真はもがいていた。
(自分にジェラシー、か...。)
複雑な思いに、俺の中の冬真は、徐々に限界に近づいていた。