日葵は、俺が思っていた以上に強敵だった。
俺が罠を仕掛けるたびに引っかかっていく日葵の反応は、俺の胸を、妙に高鳴らせた。
(コイツといると、楽しい。)
俺は、冬真の時も、レオの時もそう思えた。
俺のすること全てに、日葵は反応する。
その純粋すぎる反応をされればされるほど、もっと見てみたいという欲望が、俺の中で湧き上がっていった。
そんな日葵が見せる赤く照れた顔は、いつしか、俺以外の誰にも見せたくないと思うようにもなっていった。
(このままだと、俺、とまんねぇ。)
そんな時、あの日は訪れた。
大学で熱心に研究をしていたおじさんは、俺が子供の姿を保てる薬を開発してくれていた。
「本当は、大人の姿でいてほしいんだけど、まだ開発中でね...。」
そういっておじさんが薬を手渡したのは、結婚記念日の旅行に行く3日前の朝だった。
「寝る前に飲めばいいんですか?」
「うん、忘れずにね。
そしたら、次の日の朝も子どものままのはずだから。」
おじさんたちが旅行に行っている間、俺は近所の佐藤さん家に、面倒を見てもらうことになっていた。
ちょうど俺がレオの姿の時に、佐藤家の息子のタカシ君と公園で仲良くなっていたので、息子と遊んでくれる友達がいていいと、佐藤の奥さんは喜んで承知した。
もちろん、5歳のタカシ君の友達は、5歳のレオでなくてはならない。
それだから、この薬なのだ。
その薬を手渡されてから二日後、おじさんの予定は変更し、出発日が一日早くなった。