(なぜ、コイツがここに?)
今日ほぼ一日中、俺を見つめていた女の正体は、どうやら『日葵』らしい。
メガネはかけていないが、この黒髪三つ編みは、学校にいたときと変わっていない。
それで今、ハンバーグをほおばる俺を、ニコニコして見つめているコイツは...
(本当に、同一人物だよ...な?)
でも、ここにいる『日葵』は、学校にいる『日葵』とは随分と雰囲気が違う。
(双子か?
でもそしたら、もう片方は?)
家族の会話からしても、双子ではなさそうだ。
...どうやら、これが本物の『日葵』らしい。
日葵という女は、学校では静かなイメージがあったが、本当はそうでもないようだ。
(というか、明るい...)
ご飯を食べ終えた俺は、おじさんと風呂に入り、日葵にベットまで送ってもらった。
(もちろん、俺のことも知らねぇよな...)
寝る前に、念のため確認をする。
「本物?」
「ん?なにが?」
この反応から見て、絶対に日葵は俺の秘密を知らないだろう。
「ううん、何でもない。
ありがと、おねえちゃん。おやすみ。」
そういって、俺は目を閉じる。
ドアが閉まった音のあと、俺はまた目を開いた。
「俺の事を知らない...」
一人でそうつぶやいた後、俺の脳裏に何かが走る。
(...めちゃくちゃ面白くね?)
俺が学校で見つけた面白いヤツが、俺のいる家にもいる。
が、そいつは、俺がおんなじ人間だってことを知らない。
「久しぶりに、ワクワクしてきた。」
そういった俺は、早く明日にならないかと、少し緩んだ口元のまま、目を閉じた。