その日の帰り、俺は待ち合わせの駅まで走る。
駅前に着いたときには、時計の針がもう5時48分をさしていた。
(ヤッベぇ、もうこんな時間かよ。)
一直線に駅のトイレに向かって走る。
運よくすいていたトイレに駆け込んだ俺は、個室に入ってロックをかけた。
その瞬間、心臓の鼓動が異常に早くなり、ピタッと一瞬止まった直後に、俺の姿はたちまち小さく縮んだ。
「間に合った...」
ダラダラの袖とズボンを引きずったまま、カバンから110センチのサイズの服を取り出して、着替える。
――― そう、俺は『ゲット・ビッガー』なのだ。
毎日、午後6時ちょうどに5歳児の姿になり、朝の5時には元の姿に戻る。
信じられないような話だが、俺はこの状態で17年間、生きてきた。
5歳児の姿になってしまった俺は、重たいバックを引きずりながら、トイレから出た。