私が家に着いたとき、小田桐君の姿はなかった。




(やっぱり、見間違いだったのかな?)




家に入ると、お父さんがスーツケースを玄関に運んでいた。




「あれ?

出発、明日じゃないんですか?」



「それがね、明日の日本発の便がいっぱいだったんだ。

それで、急きょ予定変更ってこと。」



「そうなんですね...」




落ち込む私の頭を、お父さんが優しくポンポンする。




「ごめんな、せっかくの連休なのに。

お土産、いっぱい買ってくるからな。」



(大切な結婚記念日なんだから、心配させちゃだめだよね。)



「...ハイっ!

楽しんでくださいね!」



「おっ!その顔なら、父さんも安心だ。」




お父さんがそういった時、二階から、リュックを背負ったレオ君と、お母さんが下りてきた。




「えっ?

レオ君も一緒なんですか?」




「ううん。

ぼくはね、タカシ君ちにお泊りするんだー!」




(わ、私、一人...)




自分のむなしさに呆れてしまった私は、何とも言えない苦い顔で笑った。




「よ、よかったね~、レオ君。
楽しんできなよー。」



「うん!」




何も知らないレオ君は、頭をなでられながら素直に喜ぶ。