(つ、捕まってしまった...)




トボトボと足を引きずりながら「はぁ~」と肩を落とす私と、隣でなぜか上機嫌で歩く小田桐君。

そもそも、どんなに猛ダッシュしても、50メートル走11秒台の私が逃げ切れるわけがなかった。




「で、なんで逃げたの?」




そう聞く小田桐君の顔は、笑ってはいるが、完全に眼が死んでいる。




「い、いや~...」



(「あなたが私の家に入るの、見たからですっ!」なんて、

言えるかー!!)




ブツブツと一人でつぶやく私を見て、急に曇った表情をする小田桐君。




「日葵ちゃんって...


俺の事、キライ?」



「そ、そんな!」



「キライじゃ...ない?」



「もちろん、キライじゃないよ!!」




慌てて必死に否定する私を見た小田桐君は、サッと顔色を変えていつもの笑顔になる。




「じゃあ、好き?」



「うん、好き!


...って、えっ?」




満足そうに、ニンマリと笑う小田桐君。




「俺の事、好きなんだ。」



(し、しまった!

何を言ってしまったんだ、私は~///


てか、完全にハメられてんじゃん!!)




今さら騙されたことに気づいた私は、小田桐君のことを、ジッと目を凝らして見つめる。




「さてや、私を面白がっているな?

「ピザ10回のあと、ひざ!」みたいな方法、使いやがって...

おちょくってるのか、私を?

そんなに私をいじめて、楽しいのか??

楽しんでるんだな、お前さんは...ハハハ。」




昨日の事で夜もあまり眠れず、さらにはこんな朝に猛ダッシュをしてしまった私は、ついにぶっ壊れてしまった。