篠原家は、父、母、娘二人の4人家族だ。



医学部教授のお父さんと、上条家の三女のお母さんとの間に生まれたのが、私と、しず姉だった。


穏やかな雰囲気を持ちながらも、男らしく紳士的なお父さんに惹かれたんだと、お母さんが言っていた。



お母さんの上条家は、ご先祖様が武家のお偉いさんだったらしい。



それがゆえに、上条家のしきたりは、何かと厳しい。


子供たちは皆、

「男なら家族を支える立派な大黒柱となり、
女ならそんな夫を支える良妻賢母」

となるように育てられる。


そんな家柄で育てられたお母さんは、こんなハイテク時代の今でも、上条家のしきたり通りに私たちを育てた。



だから私は、親と話すときも敬語を使う。


周りにはよく、「日葵ちゃんって、お嬢様なの?」とか、ある人は「ムズカシイ関係」だとか勘違いされるけど、私たちにとっては普通だった。



そんなお母さんの教えは、


「家事ができない女は、女として失格」だとか、

「女は常に受け身であるべき」だとか、

「処女は、一生を共にする男性だけに捧げるもの」だとか、


恋にも何かと厳しかった。