「うん、うん、わかったからね。

わかったから、一旦、私の手、離そうか~?」



「いいじゃん、別に。」




そういってニコッと笑った小田桐君は、さっさと歩きだす。




「うん、そうだよね~。

べつにいいんだよね~。


って、いいわけないじゃん!!」




そういって手を振りほどこうとした瞬間、小田桐君がピタッと止まって振り返り、じっと私を見つめる。


私の手をギュッと握り直した後、じっと見つめたまま、じりじりと詰め寄ってくる。




(えっ?なに?

怒っちゃったの??)




小田桐君の鋭い眼差しに、私は思わず後ずさる。


そんな私の手を、小田桐君はグイッと自分の胸まで引き寄せた。




(ち、ちかい...///)




それから小田桐君は、私にしか聞こえない声でそっと言う。




「どんなに抵抗しても、

俺、離す気ないから。」



「えっ...?」




そういい終えた小田桐君は、さっと普段の笑顔に戻る。




「じゃあ、いこっか。」




そして私の手をつないだまま、またさっさと歩きだした。




(何だったんだ、今のは...)




そう思いながらも、私はただただ、小田桐君に引かれるがままについていくことしかできなかった。