「そんなこと言ってっ...。
急にいなくなったくせにっ...」
「それは、
...おまえのためだよ。」
「...えっ」
冬真君にそういわれて、私はそっと体を離した。
久しぶりに見た、冬真君の顔。
私をじっと見つめるその瞳は、真っ直ぐで、でも優しくて。
(本当に、冬真君だ...。)
「これ、取りにいってた。」
そういった冬真君がポケットから取り出したのは、一つの指輪。
「えっ。
これ、指輪...」
「婚約指輪。
クレアとの婚約も、解消してきた。
ほんとはこんなの、まだ重すぎるって思われるだろうから、もうちょっと後に渡すつもりだったのにさぁ...」
そういう冬真君は、照れ隠しのつもりなのか、困ったように自分の髪をワシャワシャする。