「...ほんっと、マジでバカだな。」




この懐かしい響きでさえも。




(...夢?)






 ―――― 夢、なんかじゃない。




頬にはまだ、雪の冷たさを感じられる。


指先と唇の震えが、本物だと証明するかのように。


自分の鼓動が早くなっていく音が、耳の中で響いている。




やっと声にでた、あの人の名前。




「とう、ま...くんっ...」




その名を呼んだ瞬間、後ろからかぶさって私を包み込む、この温もり。



抱きしめた時の勢いでちらっと見えた、大好きなこげ茶色の髪。


その髪からしたほのかな香りは、私と同じ『青春』の香り。




「...ただいま、日葵。」



「.....冬真君っ!!」




ベンチになんて、座っていられなかった。


私は喜びと恋しさでいっぱいの体を、心を、すべてを込めて抱きついた。




「うわっ!!

落ち着けって...」



「落ち着いてられるわけないじゃんっ!!

もうっ、会えないかと思ってたっ...」



「...そんなわけねぇだろ。

日葵がいねぇと、俺生きていけねぇじゃん。」